約 6,129,382 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2133.html
【ゆっくりサファリパーク】 夏の暑い日差しの下、僕とれいむはサファリパークへとやって来た。 ここでは虎やライオン、象やキリン等の野生の動物達がのびのびと過ごしている。 そしてめでたい事に、最近ではゆっくり達もその仲間入りをはたした。 ゆっくりとは本来、野生に生きる生物だ。 都会で生活している野良ゆっくりでは、本当のゆっくりの姿を見る事は出来ない。 僕は飼いゆっくりであるれいむに見せてあげたかった。 ゆっくり達が大自然の中で、ゆっくりと暮らしている姿を。 「大人1枚、ゆっくり1枚お願いします」 「ゆっくりは無料です。でもサファリ内に捨てないでくださいね」 失礼な事を言う受付だ。僕が可愛いれいむを捨てるわけないじゃないか。 れいむが腕の中から心配そうにこちらを見ている。 「大丈夫だよ、れいむ。僕はそんな酷い事しないよ」 「そ、そうだよね! れいむ、ゆっくりしんぱいしちゃったよ!」 安心させるようれいむの頬を撫でながら、チケットの半券を受け取り、入場ゲートをくぐる。 目の前には数台のサファリカーと、広大な森が広がっていた。 暇そうにしてたサファリカーの運転手がこちらへと駆け寄ってくる。 「お客さん、さっそく行きますか?」 「うん、よろしく頼むよ」 「ゆっくりしていってね!」 本当にゆっくりされると困るのだが、運転手はれいむをスルーしたらしく、運転席へと乗り込んだ。 その後を追い、れいむを膝の上に乗せ、乗車席へと腰を下ろす。 「楽しみだね、れいむ! いっぱい仲間に会えるといいね!」 「うん、かわいいあかちゃんがみれるといいね!」 れいむの嬉しそうな顔をみて、僕はここに来て正解だったと確信した。 運転手がエンジンをかけ、車を発進させる。 さぁ、野生の世界へ出発だ! 覆い茂る木々を抜け、車は人工のサバンナへと到着した。 目の前には広大な大自然。れいむもゆっゆっと大はしゃぎ。 潅木が散らばり、遠くにはのんびりしてるキリンの姿も見える。 「見てごらん、れいむ。キリンさんだよ!」 「ゆゆっ! すごくゆっくりしてるね!」 「キリンさんはね、あの長い首で高い場所の葉っぱを食べる事が出来るんだよ」 「きりんさん、すごーい! まいにち、おそらをとんでるみたいだね!」 などとハートフルな会話をしていると、近くの草むらから二つの影が飛び出した。 おお、野生のゆっくりだ! 「ゆっくりしていってね!」 れいむが野生のゆっくり達に元気な挨拶をする。 おや? 向こうも、こちらに気が付いたみたいだ。 「「ゆっくりしていってね!」」 サバンナに、ゆっくり達の唱和が吸い込まれていく。 野生のゆっくりの数は二匹。両方ともまりさ種のようだ。 真っ黒な帽子が緑の中にゆっくりと映えている。 「運転手さん、ちょっと止めてもらっても良いかな?」 「ええ、いいですよ。でも、こいつらに餌はやらないでくださいね」 「ああ、わかっているよ」 大自然で生きるゆっくりに餌をやると、自分で餌を取る事を忘れてしまう。 それではこのサファリパークの意味がない。 それに僕が止めてもらったのは、なにもゆっくりに餌をやるためじゃない。 れいむに野生のゆっくり達と、ゆっくり交流してもらうためだ。 僕は窓から少しだけれいむを出してあげた。 「ゆっ! れいむがいるんだぜ!」 「すごくゆっくりした、びれいむなんだぜ!」 「ゆゅ~ん、はずかしいよぉ」 おお、どうやら野生のゆっくりの目には、れいむは美しく見えるらしい。 なかなか見る目のあるゆっくりだ。 「君達、もっと近くに来てもいいよ」 飼いゆっくりを褒められて嬉しくなり、僕は思わずまりさ達を呼び寄せた。 ゆっゆっと跳ねながら、車の近くまでやって来るまりさ達。 「き、きれいなんだぜ…」 「ま、まりさのおよめさんになってほしいんだぜ…」 「そんなこといわれても、れいむこまっちゃうよぉ」 顔を真っ赤にしたゆっくりが三匹。なんと微笑ましい光景なんだろう。 運転手は欠伸をしている。お仕事ご苦労様です。 「れ、れいむ! まりさは、かりがとくいなんだぜ!」 「ま、まりさのほうが、とくいなんだぜ! れいむをせかいいち、ゆっくりさせてやるんだぜ!」 「ゆっ…ごめんね、まりさ…れいむはおにいさんとくらしてるの。おにいさんじゃなきゃだめなの」 れいむが申し訳なさそうにポツリと呟く。 その言葉に僕の心は有頂天だ。れいむかわいいよれいむ。 「そんなワケだからごめんね。まりさ達は野生でゆっくりしてね」 まりさ達には残念だけど、僕はれいむをここに置いていく気はない。 僕の可愛い飼いゆっくりなのだ。それに、受付の人にも言われたしね! 「運転手さん、行って下さい」 「はいよ」 「まつんだぜ! れいむをおいていくんだぜ!」 「ゆっくりどうしが、いちばんゆっくりなんだぜ!」 そんなまりさ達の声をスルーし、アクセルを思いっきり踏み抜く運転手。 サファリカーの秘めた野獣が本性を現す。 研ぎ澄まされた牙、黒く分厚いタイヤが地面を噛み締め抉る。 「「ゆぎゃああああああああぁあああ!!」」 運転手があちゃーと声を漏らした。 れいむがショックで口から餡子を漏らしている。 車の側を跳ねてたまりさ達は、タイヤの下で引き餡子になっていた。 地面に刻まれた真っ黒な染み。残された帽子がまるで墓標のようだ。 これは車に近づけさせた僕の責任だろう。反省反省。 「すみません、運転手さん」 「あー、まぁ仕方ないよ。ゆっくりには、よくある事だから」 やはり自然に生きるというのは大変な事なのだなぁ。 れいむの口元についた餡子をハンカチで拭いながら、僕は心からそう思った。 「ところで運転手さん。まりさ達は、あのままで良いんですか?」 「大丈夫ですよ。他の動物か虫が掃除してくれます」 「なら安心ですね」 サファリカーは再び前進を始めた。 車に揺られながら、まだ泣いてるれいむに、野生の過酷さを教えてあげる。 最初はなかなか理解してくれないれいむだったが、ゆったりと歩いている象を見せたら機嫌が直ったみたいだ。良かった良かった。 「象さんはね、あの長い鼻で高い場所の葉っぱを食べる事が出来るんだよ」 「ぞうさん、すごーい! まいにち、おそらをとんでるみたいだね!」 「いや、上に行くのは鼻だけなんだけどね」 「ゆっ! ゆっくりりかいしたよ!」 などとハートフルな会話をしていると、近くの丘の上に揺れる二つの影が見えた。 おお、野生のゆっくりだ! しかし、あの様子は普段と違う…そうか! 「運転手さん、ゆっくりの近くに止めてください。静かにゆっくりお願いします」 「はいよ」 ゆっくり達に気づかれないよう、こっそりと車を近づけ停止させる。 野生の動物ならこの時点で気づくだろうが、ゆっくりが相手ならこれで大丈夫だ。 それに僕の想像通りなら、エンジンを切らなくても気づかないだろう。 ひょっとすると、気をつけなくても気づかないかも知れない。 「ほら、れいむ。向こうを見てごらん」 「ゆっくりし──」 僕の指差す方にゆっくりを見つけ、早速、挨拶をしようとするれいむ。 だが野生のゆっくり達の様子に気づくと、慌ててその声を飲み込んだ。 「ゆっふぅうう! まりさぁ、かわいいよぉお、まりさぁあああ!」 「ありすうぅぅう、もっとまりさのまむまむを、つきあげるんだぜええぇええ!」 「んほぉお! うれしいこといってくれるわね! たっぷり、すっきりさせてあげるわぁあ!」 ご覧のように、ありす種とまりさ種がお楽しみの真っ最中だ。 過酷な大地の上では、子孫を残していく事が何よりも大事なのであろう。 こんな真昼間っからお盛んに腰を揺らしている。 二匹のゆっくりの身体は得体の知れない汁にまみれ、身をくねらせる度に、クッチュクッチュと音をたてた。 ありすの長い舌が、ピンクに染まったまりさの頬をベロベロと舐めまわす。 まりさはゆっゆっと切なげな声をあげると、今度は唾液で溢れたありすの舌へ、自分の舌を絡め始めた。 「んっちゅ、ちゅぱっ…! す、すごいわ、まりさぁあ! こんなとかいはなてく、どこでおぼえたのおぉお!?」 「じゅるっ、ちゅぽっ…! あ、ありすのために、れんしゅうしてたんだぜぇええ!」 「うれしいぃぃい! ありすのあいをうけとってぇえええ!」 「んっほ! んっほおおぉおおお!!」 ありすのぺにぺには、まりさへの思いで、はち切れんばかりに怒張している。 もう我慢ならんとばかりに、サバンナのように熱く湿ったまむまむが突き上げられる。 二匹の足元には、黒と黄色のマーブル模様の湖が出来上がっていた。 カスタードと餡子の混ざった咽返る匂いが、今にも風に運ばれこちらへと伝わってきそうだ。 「ハハハ、見てごらん、れいむ。あのありすのぺにぺに、すごく大きいね」 「もぉ、おにいさんのえっちぃ。それに、おにいさんのが、おおきいよぉ」 「こいつめぇ~」 「ゆぅ~ん」 運転手がケダモノを見るような目で僕達を見つめている。お仕事ご苦労様です。 「しゅご! しゅごい! ありすのぺにぺに、まりさのまむまむのおくに、あたってりゅうぅうう!」 「まりさ、にんっしんしちゃうの? ありすのぺにぺにで、にんっしんしちゃうのおぉおお!?」 「しゅっきりくる! しゅっきりきちゃうんだぜぇええ!」 「んほっ! んほっ! まってて、まりしゃ! ありしゅもしゅっきり! しゅっきりくるぅぅうう!!」 「「んっほおおおお!! すっき──」」 「「ゆ゛き゛ゃ゛あ゛あ゛あああああああああぁああ!!」」 「パオ~ン!」 運転手があちゃーと声を漏らした。 れいむがショックで口から餡子を漏らしている。 いつの間にか近くに来ていた象が、うっかり二匹のゆっくりを踏み潰していた。 何事も無かったかのように、のっしのっしと歩み去っていく象。 その足の裏には、悲痛な叫びを残したデスマスクが張り付いてた。 「いやぁ、驚きました。象って、こんな近くまで来るんですね~」 「まぁ、そこそこ人間馴れしてますからね。あまり馴れると困るんですが」 「ゆっ…ゆっ…ゆっ…」 れいむは自然の非情さに耐えられなかったのか、ガクガクと身を震わせている。 やっぱりれいむは飼いゆっくりだ。しっかり僕が守ってあげよう。 「それじゃ車進めて下さい」 「わかりました。今度は向こうの湖まで行ってみましょう」 サファリカーは再び前進を始めた。 人工物であろう湖が、サバンナの真ん中に広がっている。 きっと野生の動物達が、ここに水を飲みに集まったりするのだろう。 今、この水場を独占してるのは…おっ、ゆっくりだ! 「ごきゅごきゅ、おみじゅしゃん、しゅごくおいちぃね!」 「きゃっきゃっ、ちゅめた~い」 「あかちゃんたち、こっちきてね。おかあさんが、きれいきれいしてあげるね」 「「ゆゆっ! おかぁしゃん、ありがちょう!」」 どうやられいむ種の家族が水浴びをしてるようだ。 親れいむの周りを、赤れいむが楽しそうに跳ねている。 赤れいむは十匹近くいるだろうか? 結構な大家族のようだ。 そういえば、れいむが赤ちゃんを見たがっていたな。 「ほら見てごらん、れいむ。赤ちゃん達が楽しそうに水浴びしてるよ!」 「ゆっ…?」 まだ腕の中でガクガク震えていたれいむを持ち上げ、窓から家族の団欒が見えるようにしてあげる。 「ゆゆっ! ほんとうだ、あかちゃんがいるね!」 「そうだね、れいむと同じれいむが沢山いるね」 「ゆゆ~ん、みんなすごくゆっくりしてるよ~」 どうやら目当ての赤ちゃんが見れて嬉しかったらしい。 れいむの機嫌は、あっという間に直ってしまった。 「ゆっ、ゆ~♪ れいむのかわいいあかちゃん~♪ ぺ~ろぺ~ろ、いつもきれい~♪」 「ゆっゆっ! おかぁしゃん、くしゅぐっちゃいよぉ!」 「おねえしゃんばきゃりじゅる~い!」 「きょんどは、れいみゅをぺ~ろぺ~ろしちぇね!」 「みんなじゅんばんをまもってね! みんなでゆっくりしようね!」 「「ゆゆ~ん♪」」 赤れいむ達を順番に舐めてグルーミングする親れいむ。 この厳しい環境の中で、あれだけの家族を維持するのはさぞ大変だろう。 親れいむの苦労を思うと胸が痛くなりそうだ。 「ゆ~ん、あかちゃんすごくかわいいよぉ~」 「本当だね。あんな赤ちゃん達が家にいたら楽しいだろうね」 「おにいさん…れいむも、おにいさんとのあかちゃんほしいなっ」 「ハハハ、こいつめぇ~」 衝撃発言に嬉しさを隠し切れない僕は、思わず頬を赤らめてしまう。 運転手は遥か遠くのキリンの群れを見ていた。お仕事ご苦労様です。 「ゆゆっ! そろそろ、じかんだよ! ゆっくりしないで、おうちにかえろうね!」 「ゆっ!? どうちちぇ?」 「もっちょおみじゅさんであしょびちゃいにょに…」 「ゆっきゅりちようね?」 「だめだよ! あかちゃんたち、よくきいてね? ここには、もうすぐ──」 「ゆぎゃあああああああ!!」 突然響き渡る赤れいむの叫び声。 僕とれいむのハニームーンを邪魔するなんて、いったい何事なのだろう? 「ゆ゛か゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛、れ゛い゛ふ゛の゛あ゛か゛ち゛ゃ゛ん゛か゛あ゛ぁ゛あああ゛!!」 運転手があちゃーと声を漏らした。 れいむがショックで口から餡子を漏らしている。 いつの間にか湖から上陸したワニが、赤れいむを次々と丸のみにしている。 リボンも残さずワニの腹の中へ収まっていく赤れいむ達。 「あかちゃんたち、おかあさんのおくちにはいってね! ワニさんのおくちじゃなくて、おかあさんのおくちにはいってね!」 「ゆっきゅりしないで、いしょぐよ!」 「おかぁしゃん、たちゅけてぇ!」 今度は母れいむの中に次々と赤れいむが収まっていく。 足の遅い赤れいむを収納して、一気に逃げるつもりなのだろう。 ワニはああ見えてかなり素早い。正直、あまり良い策とは思えないのだが… 子れいむの収納を終えた母れいむが、ワニに背を向け走り出す。 そのスピードはお世辞にも速いとは言えない。 このままだと追いつかれてしまうだろう。 しかし、母れいむの思いが通じたのか、ワニはこれ以上追って来なかった。 いや、正確には、最初に現れたワニは追って来なかった。 大きなワニの後ろから、小さなワニが三匹上陸してくる。 あのワニの子供達なのだろうか? 母れいむ目掛けて前進を始める子ワニ達。 小さな尾をくねらせて、恐ろしいスピードで追撃を開始する。 「でょぼぢでぶぇでるのぉおおお!?」 あーあ、後ろなんか見なきゃ良いのに。 子ワニ達はその圧倒的なスピードで、母れいむのすぐ後方へと付いてた。 「ゆっべっぎゃあぁああああああ!!」 一匹の子ワニの小さな口が、まず母れいむの足を食いちぎった。 最初に相手の動きを止める。子ワニの将来が楽しみだ。 動けなくなった母れいむの頬を、額を、真っ黒な髪を、子ワニ達がゆっくりと捕食していく。 母ワニと思われる大きなワニは、その様子を見ながら、大きな口を開け日光浴を楽しんでいた。 口と言えば、口の中に入った赤れいむ達はどうしたんだろう? 疑問に思い母れいむの口を注視してみる。 絶叫で大きく開かれた口の中では、絶叫のマトリョーシカが完成していた。 きっと叫んだ時に潰してしまったのだろう。ご愁傷様です。 数分後、湖にはワニの親子の団欒する姿だけが残された。 大自然の水場は公共物だ。誰が独占するわけでもない。 そう言えば母れいむには、ワニが来るのを理解していた素振りが見えた。 あれはどういう事なんだろう? しかし、その疑問に答えてくれる相手は腹の中だ。 今更どうしようもない。 「いやぁ、ワニって饅頭食べるんですね。驚きました」 「饅頭を食べるのかは解りませんが、見ての通りゆっくりは食べるみたいですね」 「不思議ですね」 「全くですね」 自然は神秘に満ち溢れている。僕は込み上げる感動に打ち震えた。 れいむは運転席のシートの下に潜りこみ、ガクガクと震えていた。 その後、クマの一振りで木っ端微塵になるゆっくりや、ヘビに丸のみされ腹から声を出してるゆっくり、子ライオンの狩りの練習相手にされるゆっくり等を見ながら、ゆっくりと出口へと辿りついた。 西に沈みかけた太陽が、真っ赤な光で僕等を照らす。 実に有意義な一日だった。僕は運転手とガッチリ握手する。 「今日は、ありがとうございました」 「いえいえ、またいらっしゃってくださいね」 「だってさ! また来ようね、れいむ!」 ビクっと身を震わせたれいむを腕に抱え、僕達はサファリパークを後にした。 おわり このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/4455.html
※いじめの対象はありすメイン他おまけ程度です ※肉体的虐待より精神的虐待を目指しました ※俺設定を含みます ※その他あれこれとあるかもしれません 幻想郷のとある人里、その近くにある里山にゆっくり達の声が響いた。 「ゆっ!にんげんさんがいるよ!」 「ゆぅ~。れいむのおかあさんはにんげんさんはゆっくりできないっていってたよ」 「むきゅ!れいむのいうとおりだわ。ぱちゅりーもおかあさんからそうきいたもの」 「れいむ、ぱちゅりー、おちついて!かんたんにとりみだすなんてとかいはじゃないわ!」 まりさが発見した人間にれいむとぱちゅりーが怯え、ありすがそれを宥めている。 四匹は成体に成り立てのまだ若いゆっくりだが、親の躾が良かったのか人間の恐ろしさを十分に理解していた。 普段は里山のこの辺りにゆっくりが出没することはない。人里に比較的近く、人間が山菜などの山の恵みを採りに来る ここはこの山の奥の方に住むゆっくり達にとってはゆっくり出来ない場所だからだ。 ゆっくりは成体になると育った巣と親元を離れて一人暮らしを始める巣立ちを行う。 この四匹は徐々に近づいてくる巣立ちの日に備えて、 仲良し四匹組で自分の巣を作る新天地の下見をしているうちに張り切って進みすぎていたのだった。 「ん?ここいらへんでゆっくりを見るなんて珍しいな」 人間の男の方もゆっくりに気付いたようだ。 「ゆ、ゆっくりしていってね!」 まりさが意を決して人間に声を掛ける。本当なら一目散に逃げ出したかった。 しかし、もしゆっくりより遥かに強いという人間が襲いかかってきたら、まず犠牲になるのは運動の苦手なぱちゅりーだろう。 友達を見捨てるようなことは出来ない。いや、仮に出来たとしても絶対にやっちゃいけない。 「ああ、ゆっくりしていってね」 返ってきたのは四匹にとっては予想外の返事だった。 緊張状態にあった四匹の体が男の一言で弛緩する。特に、いざという時は自分が男に立ち向かってその隙にみんなを逃がそうと、 内心で死をも覚悟していたまりさは安堵のため息を吐いた。 「ゆ、ゆふぅぅ~」 そんな風になにやら固まったり弛緩したりしている四匹を不思議そうに見ながら、男が質問する。 「お前達、何でこんなところにいるんだ?」 「れいむたちは、もうすぐすだちをするんだよ!」 「むきゅ!むれでしごとをするいちにんまえのゆっくりになるの!」 「だから、いちにんまえにふさわしい、とかいはなおうちをさがしてここまできたのよ!」 挨拶を返してくれたことで、この人間は言われていた程ゆっくりできない訳ではないらしいと判断した三匹が次々に質問に答える。 「へー、そりゃおめでとう。でもこの辺は人間のテリトリーだから巣を作るには危ないぞ。 それにここからだと群れが遠いから、仕事とやらもちゃんとできなくなっちゃうぞ」 男のその言葉に、まりさが慌てて反応する。 「ゆゆ!しごとができないのはだめだよ!いちにんまえになれなくなっちゃうよ! いちにんまえになれないとけっこんもすっきりーもできないよ! まりさは、けっこんしてあかちゃんをつくって、おかあさんみたいなりっぱなゆっくりになりたいよ!」 どうやらこの四匹がいる群れでは、成体となって巣立ちをし、群れのために仕事をすることでようやく一人前と認められるようだ。 そして、一人前としての義務を果たすことでようやく結婚や出産の権利が認められるらしい。 義務と権利の相関。ゆっくりの群れにしては随分立派なことだと思いながら更に男は尋ねた。 「仕事ってのはどんなことをするんだ?」 「まりさはかりをして、ゆっくりできるごはんさんをあつめるよ!」 「れいむはほぼさんになるよ!おかあさんのいないこどもたちのめんどうをみて、ゆっくりさせてあげるんだよ!」 「ぱちゅりーはじむのしごとをするの。ごはんのりょうやおうちやこづくりのもんだいをかいけつするのよ」 「ありすは、とかいはなこーでぃねーたーになるわ!おうちやひろばをかざって、とかいはなえんしゅつをするの!」 なるほど、男は納得して頷いた。どうやら四匹ともそれぞれの特長を生かした仕事に就くようだ。 食料集めは絶対必須の仕事だ。食べなければ何もできない。 保母さんも分かる。もろい生き物であるゆっくりの子育ての過程ではどうしても親を失った子が多く出るだろう。 その世話をして一匹でも多く一人前にすることは群れの繁栄に繋がる。 事務も群れのためになる仕事だろう。食料を集めたら集めただけ食べてしまって、ちょっとした怪我や雨ですぐ飢えるといった事態を避けるため備蓄の指示をだす。 また、家造りや子作りは特に越冬時に問題になりやすいため、事前に入念な準備と指導が必要だろう。 いや、しかし、コーディネーターというのは何だろうか?家や広場を飾ると言っていたがそんなことが必要なことなのだろうか? 生活に余裕を持てる強い生き物、例えば人間や妖怪が余暇を利用してそういった楽しみを追求するのは分かる。 しかし、ゆっくりは弱い生き物だ。そう、無い知恵を振り絞り、必死に頑張って働いても他の生物にあっさりとその命を踏みにじられるほどに弱い。 そんな生き物に必要なのはまずは生きるために働くことではないだろうか? 男はその疑問を四匹にぶつけてみた。 「まりさとれいむとぱちゅりーの仕事は分かった。でもありすのコーディネーターは本当に必要な仕事のか?」 「ゆ?」 「ゆぅ~?」 「むきゅきゅ?」 「どぼじでぞんなごどいうのぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!どっでも゛どがいはなじごどでしょおぉぉぉぉぉぉ!!!」 ありすを除く三匹の疑問の声とありすの絶叫が里山に木霊した。男はありすを無視して平然としたまま続ける。 「だって、そうじゃないか。なあ、まりさ。ありすは飾り付けをするよりご飯集めをした方が いっぱいご飯が集められて良いと思わないか?」 「ゆ?ゆぅ~、でも……」 「飾り付けは生きるために絶対必要って訳じゃないんだろ?なら、ありすには狩りに参加してもらって 美味しいものをいっぱい集めてもらう方が食べるものがたくさんになってゆっくりできるじゃないか?」 「ま、まりさにはわからないよ……」 「れいむはどうだ?ありすは飾り付けをするより、たくさんのこどもを育てて一人前にする方が群れに貢献できると思わないか?」 「ゆゆっ!」 「ぱちゅりーは?運動が苦手なぱちゅりーはありすが手伝ってくれれば、より効率的に働けるんじゃないか?」 「むきゅう……」 男が三人に声を掛けるのを聞きながら、ありすは焦っていた。まさか自分の仕事をこんなところで人間に完全否定されるなんて思ってもいなかった。 今の今まで都会派な自信に満ち溢れていた心が急速に萎えていく。もしも、群れで自分の仕事が認められなければ、仲良し組で自分だけ子供のままということになる。 嫌だ。絶対に嫌だ。 子供の頃からずっと一緒で仲良しだったみんなが一人前になるのを尻目に一人だけ子供のままでいる。 やがては結婚し、子供を作り、立派な親になるみんなに置いていかれて一人だけ結婚もすっきりもできないままでいる。 そんなの全然都会派じゃない。田舎者だ。とびきりの田舎者だ。 「ぞんなのい゛や゛だあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!ゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!!!」 「ありす、おちついてね!ゆっくりしてね!」 「むきゅ!とりみだしちゃだめよ、ありす!そんなのとかいはじゃないわ!」 「どがいはじゃないのはい゛や゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」 れいむとぱちゅりーが何とかありすを落ち着けようとしている。その様子を横目にまりさは男に食って掛かった。 「おにいさんやめてね!ありすをいじめないでね!」 「別に虐めてるつもりはないんだけどなあ。ただ本当のことを言っただけであって」 男には反省の色は全く無い。いや、男はそもそも間違ったことを言ったとも思っていない。 普段ゆっくりと触れ合う機会の殆どない男には、ありすの都会派へのこだわりとそれを自分が踏みにじったことなど分かるはずがなかった。 「なにがぼんどうのごどだあ!ゆ゛っぐり゛でぎないじじい゛はゆ゛っぐり゛ぜずにじねぇ!!」 先ほどの男の言葉を聞き咎めたありすがとうとう暴発した。 れいむ、ぱちゅりー、まりさを置き去りにして男の足に向かって体当たりを繰り返す。 「おいおい、なんて事するんだ。せっかく群れのためになるよう忠告してやったのに。まったくありすは悪いゆっくりだな」 男のその言葉に、まりさは自身のあんこが急激に冷えていくのを感じた。代わりに忘れていた人間への恐れが急激に浮上してくる。 ありすの気持ちは分かるが人間を怒らせるのだけはまずい。 ふと横を見る。するとれいむとぱちゅりーは既に恐怖にぶるぶると震えていた。とても動けそうな状態ではない。 自分がやらなければならない。ありすを落ち着かせ、人間さんに謝って、みんなを連れて一刻も早くここを立ち去らなければならない。 「お、おにいさん!ゆっくりごめんなさい!ありすもわるぎがあるわけじゃないんです!」 「ジジイ呼ばわりした挙げ句に体当たりまでしといて悪気はないって言われてもなあ」 「ゆ、ゆぅ……。ありす、そんなことしちゃだめだよ!ゆっくりできなくなるよ!」 男とまりさの会話の間も体当たりを続けていたありすをまりさが制止する。 「ゆっくりまっててね、まりさ!もうちょっとでこのじじいをたおせるわ!」 しかし、ありすは従わなかった。いや、むしろ攻撃が効いていると確信して勢いを強めている。 あまりの怒りに人間への恐怖も親の教えもあんこの遙か彼方へ飛んで行ってしまったようだ。 「にんげんざんをだおぜるわけないでしょおおおお!!おねがいだがらやべてよおおお!!」 「う~ん、もういいや。最初は礼儀正しいゆっくり達かと思ったけどやっぱり害獣なんだな。 放っとくと里に迷惑を掛けるかもしれないしお仕置きしとくか!」 男の口から死刑宣告にも等しい言葉が発せられた。 恐怖のあまり硬直していたれいむとぱちゅりーがその言葉に弾かれたように動き出した。二匹揃ってゆっくり式の土下座を繰り返す。 「おねがいだがらびゅるじでぐだざいぃぃぃ!あやばりばずがらあ゛ぁ゛ぁ゛!」 「むきゅう!むきゅきゅう、むきゅう!」 懸命に命乞いをする二匹、ぱちゅりーに至っては余りの必死さに言語を失っている程だ。 しかし男はそんなゆっくり達の懇願を全く意に介さない。 「い~や、ダメだ。お前達はクズだ。害獣だ。一匹残らずお仕置きする」 そう言うと、男はゆっくりからすると信じがたい程の速さでいまだに体当たりを続けるありすとそれを止めようとするまりさから それぞれカチューシャと帽子を奪い、それでも土下座を繰り返すれいむとぱちゅりーからも飾りを取り上げた。 そのままの勢いで宣言する。 「お前達はまだ悪いことをしたわけじゃないから命だけは助けてやる。だが、ゆっくりにとって一番大事だという飾りは破壊させてもらう」 そして間髪入れずに全ての飾りを力尽くで引きちぎり、たたき割った。 「「「「ゆぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」」」」 四匹の悲鳴が里山に響き渡る。飾りのないゆっくりは仲間はおろか親姉妹からさえ排斥される。 これでもう四匹がゆっきりできる可能性は一切無くなったと言っても過言ではない。 「じゃあな!ゆっくりども!これに懲りたら少しは良いゆっくりになれよ!」 そして男は、悲鳴を上げた体勢のまま茫然自失の四匹を置いて意気揚々と里山を下っていった。 その顔には自分が悪いことをしたという罪悪感など微塵も感じられない。 逆に、里を害獣から守ったという達成感とその害獣にさえ更生の道を与えてやったという満足感に輝いていた。 おまけ どうしてこんなことになったんだろう。 男が去ってから数十分、ようやく思考を取り戻したまりさは自問自答した 大切な大切なお帽子さんを失ってしまった。 もうすぐ一人前になれるはずだったのに。お母さんや妹たちから祝福されて巣立ち、立派に仕事をこなし、 そしてやがてはれいむにプロポーズするはずだったのに。 全ては失われてしまった。 お母さんも妹たちも群れでの立場もれいむとの幸福な生活も生まれてくるはずだった子供達も、全て。 ほんのついさっきまで輝くような未来があったはずなのに。 今や残された未来は、飾りのない、ゆっくりできない日陰者ゆっくりとしてのくすんだ未来だけ。 どうしてこんなことになったんだろう。 「……ありすのせいだよ」 まりさと同じように沈痛な面持ちで何事かを考え込んでいたれいむがぽつりと言った。 そうか、ありすのせいだったのか。 「ありすがおかあさんたちのことばをわすれて、にんげんさんにさからったからこうなったんだよ……」 風の音に紛れてしまいそうなくらい小さな声だったその言葉は、しかし、今の四匹にはどんな音よりも大きく聞こえた。 そうだ、自分は必死で止めようとしたのにありすは……。 「むきゅ。それにありすはむれのためにならないしごとをしようとしてたわ。さいしょからゆっくりできないゆっくりだったのよ」 ぱちゅりーが更に付け加えた。 そうだよ、今考えればお兄さんが言ってたことが正しいじゃないか。 「ま、まって!ありすはそんなつもりじゃ「ばりずのぜいだよおおおおおおおおおおお!!!」 反論しようとしたありすの言葉を遮ってれいむが叫んだ。あんこの奥底から絞り出したような怨嗟に満ちた叫びだった。 「むきゅう。ありすにはしつぼうしたわ」 ぱちゅりーもありすを見限ろうとしている。 ありすは二匹の責めに耐えられなくなりまりさを見た。大好きなまりさ。とっても都会派で、格好良くて可愛いまりさ。 一人前になって、自分に自信が持てたその時には、ずっといっしょにゆっくりしようとプロポーズするつもりだったまりさ。 まりさならきっとありすを助けてくれる。 「……ま、まりさ」 まりさは何も言わなかった。ただその目だけが、怒り・憎しみ・絶望といった様々な負の感情が混じり合い爛々と輝いている。 まりさは何も言わなかった。何も言わないまま、ありすに渾身の体当たりを仕掛けた。 「ゆげぇっ!」 ありすは予想外の展開にまともな抵抗も出来ずにふっとんだ。全身に痛みが走る。 そして制裁はそれで終わらなかった。まりさと、感情を爆発させたれいむがありすに突っ込んでいく。 「……」 「ゆっくりしね!ゆっくりしね!」 「ごみくずありすはしにさない!しんでぱちゅりーたちにおわびしなさい」 無言で襲いかかるまりさの攻撃と怨嗟の言葉と共に襲いかかるれいむの攻撃。ぱちゅりーの罵声。 ありすは身も心も既に虫の息だ 「も、もっとゆっく――ゆべぇっ」 とうとうありすはお決まりのセリフすら言えずに息絶えた。 三匹はそれでも決して攻撃を止めようとしない。 攻撃を止めれば現実と向き合わなければならなくなる。これから死ぬまで全くゆっくり出来ないであろうという現実と。 それが何より恐ろしかった。先にあっさりと死んだありすはまだ幸せなのかもしれない。 これから先、この三匹に決して幸福は訪れない。 このSSに感想をつける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/313.html
「ここはまりさのおうちだよ!ゆっくりでていってね!!」 ある森の中、館と家の中間くらいの大きさの煙突がある家の前のことであった。 帽子をかぶったゆっくりが叫んでいる。 この個体はゆっくりまりさと呼ばれる。天邪鬼で意地っ張りな個体が多い種族だ。 ゆっくりまりさはいたずらを好む。好奇心が旺盛なためか、他者にかまってもらいたいのか、 いずれにしろよく悪さをしでかし、叱られることが多い。しかしこのまりさの行動はそれを踏まえてもありえないものであった。 他者の家に勝手に上がりこんでここが自分の家だと宣言している。 この家の主人であろうか、若い女性が苦笑いしている。 自分が留守にしていてしばらくぶりに帰ってきたらこの始末だったためである。 うっかり鍵を掛け忘れていたのを思い出す。長期間留守をするにしては間が抜けたものである。 そんな彼女はどうするべきかと悩んだしぐさをしている。 「ゆっくりしんでね!!」 あろうことがまりさは女性に向かって体当たりを仕掛けてきた。 しかし女性はひょいと身をそらしたため難なくよけられ、 まりさは逆にあっさりと捕まってしまい、押さえつけられることとなった。 女性は目の前のゆっくりは自らの力を把握できていないのだろうか。 そう思ってまりさをつねる。ひたすらつねる。女性はまりさが泣くまでつねるつもりであった。 「ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛っ゛ぐ・・・」 しかしまりさは耐えている。更に力を込める。それでも泣かない。目に涙を浮かべて必死に耐える。このままでは千切れてしまう。 しょうがないので女性はまりさを外に放り投げて家の中に入った。 「ゆっくりいれてね!ここはまりさのおうちだよ!!」 しかし女性は聞き入れない。このまま家の奥へと向かっている。まりさは焦りを感じていた。 このままあの人間があの子をみつけたらどうなってしまうのかと思い、口に石をくわえ、窓から家の中へと侵入してきた。 砕けたガラスによって細かい切り傷がいくつもできたが、それでもまりさは飛び跳ねて体当たりを続ける。 なかなか根性があるというか図々しさに毛が生えているというか、傷だらけなことをまるで感じさせない挙動だった。 横で攻撃してくるゆっくりまりさの攻撃に女性は内心あきれながら無視して家の中を捜索していた。 まりさの攻撃を全て軽くかわす。勢いあまって壁に激突しても次の瞬間には飛び掛ってくる。 女性は段々と違和感を感じていった。家の中に何か大事なものがあるのだろうか。 この剣幕はただごとではなかった。攻撃性が少なく、 あまりにも弱すぎため無害なものが多い ゆっくり種がここまで攻撃的となる原因はなんだろうと興味を持った。 そしてある部屋の前に来ると扉の前にまりさが立ちふさがった。 「おねがいだからでていってね!!ここだけでもまりさのおうちにして!!」 放り投げてどける。扉を開けると、一匹のゆっくりがいた。あの青白い顔はゆっくりぱちゅりーである。 体が弱く、野生を生きる能力があまりないため、いつもじっとしている個体である。 しかしぱちゅりー種であることを踏まえても、その顔色は病的なまでの白さを誇っていた。 「むきゅぅぅ・・・。」 今にも力尽きそうなその姿。必死なまりさ、これらの状況から判断して、このまりさはぱちゅりーを守ろうとしたらしい。 「ゆぅぅぅぅぅ!!!!」 まりさはぱちゅりーの前にかばうように唸っている。 女性はどうしたものかと思案して、ぱちゅりーを介抱することにした。ここまで弱っているとほうってはおけない。 放り出すには目の前の命はあまりにも儚げで、今にも消え入りそうだった。 事情を知った女性はまりさの方をじっと見つめ、優しく両手で抱える。 「ゆ!?」 すると全力で窓の外に放り投げた。まりさはぱちゅりーを守るために警戒していただけだったが、 人の家に居座られて体当たりされたので、ちょっと気に入らなかったからこれくらいはしてもいいと女性は思った。 「むきゅぅ・・・、おうちにすませてくれてありがと・・おねぇさん・・・」 しかし一向に良くはならない。いくら喘息もちで死にやすいとはいえ、これは少しおかしかった。 女性は怒りが収まり、ぱちゅりーにお願いされたこともあったのでまりさを家の中に入れてやった。 まりさの体にあるガラスでできた傷は浅かったが、女性は一応手当を受けさせようとした。 「ゆっくりはなしてね!おねぇさんとはゆっくりできないよ!」 しかしまりさはそれを拒み、ぎろりと睨み付ける。 まりさはずっとぱちゅりーのそばにいた。 まりさはとても心配に思っていた。唯一の友達であるぱちゅりーが調子が悪い。自らの手で餌を食べることができなくなり、 一向に動く気配がない。以前自分達の家であった木の空洞にぱちゅりーをひとりにしておくと、 蛇などの動物が来たときに食べられてしまう。そのため、丈夫で安全で誰も住んでいない人間の家を探し出し、 ぱちゅりーを引きずって連れてきたというわけである。そこで留守にしていた人が帰って来たというわけであった。 女性は、この二匹を追い出して次の日玄関先で死なれたら目覚めが悪いと思った。 結局、女性はまりさとぱちゅりーを家に居候させることにした。 それから人とゆっくりの奇妙な共同生活が始まった。 まりさはぱちゅりーと四六時中いっしょにいる。女性は信用されていなかった。そのため、餌をとりにいくこともしていなかった。 まりさが留守の間にぱちゅりーと女性の二人だけが残されることを警戒していたのだろう。 いくらなんでもこれでは本末転倒だ。女性がこのままでは二匹が飢え死にしてしまうと思って食べ物を与えると、 まりさはまず毒見をしてからぱちゅりーに咀嚼した食事を与えた。 消化しやすくするためであろう。 まりさは明らかに人間不信であった。もしかしたら以前人間にひどい目にあわされたのかもしれない。 だからといって女性は特になにをするでもなく、二匹に餌を与え続けた。 「ゆっ・・・」 あるとき家の前に傷ついたゆっくりありすがいた。すぐに生殖行為に及ぼうとすることから、 ゆっくり達の間では嫌われているものが多い個体だった。けれども女性はありすを家の中に招いた。 驚くことにこのありすはまりさやぱちゅりーを見ても生殖行為を行わなかった。 最初は驚いたまりさとぱちゅりーだったが、辛い状況が続いたため、警戒心が養われていたためだろうか、 目の前のありすが他者に害を与えるような存在ではないと気づいた。 二匹はありすを受け入れた。 「ありすはきらいじゃないよ!ゆっくりしていってね!!」 「むきゅぅ、よろしくね」 「きやすくはなしかけないでよ。いわれなくてもゆっくりしていくわ!」 そういいながらありすは二匹の手伝いをした。まりさと共にぱちゅりーの看病をしていた。このありすは意地っ張りであるらしいが、 面倒見はいいようだ。ありす種に性欲がなくなるとこんな性格だとは意外であった。 いつからだったかわからないが、三匹は常に一緒にいた。 「ゆっくりしね!ゆっくりしね!」 「うっうー♪」 ある日女性はとんでもないものを連れてきた。攻撃的な種属のゆっくりふらんとゆっくりれみりゃだ。まりさたちは虐められると思い、 身を強張らせた。しかし 目の前の二匹は何かがおかしい。それもそのはず、ゆっくりふらんには羽が片方ついていなかった。 再生力が強いふらんだったが、 たぶん生まれつき羽がなかったら再生もできないだろう。ゆっくりふらんは飛ぶ性質を持つため、はねる動きは不得意なようで、 ずりずりとゆっくりともいえないほどの速さで這いずり回ることしかできていなかった。れみりゃは叫び続けるふらんのそばで飛んでいた。 こちらはしっかり羽がある。 しかし牙がなかった。 この二匹はたぶんほうっておいたら死ぬだろう。 「「「ゆっくりしていってね!!!」」」 またある日女性はゆっくりれいむの家族を連れてきた。母れいむは行くあてがなく困っていたところらしい、 体中ぼろぼろで汚れていた。共に連れてきた子れいむ、赤ちゃんれいむも不安そうにきょろきょろと辺りを見回す。 そんな彼女達はまりさ達に受けいられた。家族が一気に増えた。 「わかるよーわかるよー」 「ちーんぽっ!」 「ケロ、ケロケロ!」 だんだんゆっくり達が増えてくる。いつしか家の中にはゆっくりたちがたくさん溢れていた。みょん、ちぇん、ふらん、れみりゃ、 ありす、ぱちゅりー、まりさ、そしてそのほかの様々な種類のゆっくりたち。 みんなこの家に来るとゆっくりしていた。 彼女達はけんかすることもあったが、そのたびに女性につねられ、叱られることで少しずつ仲良くなり、 いつしか家族の一員となっていった。 女性はあらゆるゆっくり達を家の中に招いた。ここで彼女達に狩りの仕方を教え、食べられるもの、農耕の仕方など、 様々な生きる術を教えていた。 それからまたしばらくたった。ゆっくり達がゆっくりさせてくれた女性への恩返しのため、皆一丸となって働いていた。 家の前には畑が広がり、ゆっくり達が道具を口で使って耕している。 このとき女性は驚いたが、ありすは農耕における用地の運用の仕方や、道具の効率的な使用法をあっという間に覚えていった。一度教えたことを更に発展させて考えることができる。 人間にも難しいことだった。女性はありすに家の中の本を与えて読ませた。女性が難しいからといって買ったまま積んでいた本をありすは次の日にはそらで言えた。 ありすは正直なところ女性よりも頭がよくなっていたかもしれない。ありすの知識は大いに役立った。 体力のあるものは狩りに出かけていた。 母れいむはきのこと山菜を取りに山を駆け回る。最も力があって重いものを持つためだ。途中で蛇や猪などの獣とかち合っても、護衛のみょんやけろちゃん、ちぇん、 ゆっくり達が追い払う。おいしい食べ物を待っている仲間がいるから、だから頑張れる。 そして、留守番をしているものは子守をしていた。 「ゆっくりしね!!!」 「ゆっくりするー!!」「わたしもー♪」「遊んで♪遊んで♪」「ふらんおねーちゃん♪」 「うー、うー♪」 なんとふらんがれいむの子供達にかこまれて遊ばれていた。ふらんは不機嫌だったが、 赤ちゃんれいむたちはお構いなしにふらんにつっかかる。そんな赤ちゃん霊夢にふらんは本気で威嚇しているが、 れいむ達は怪獣ごっこだと思っているようだ。動きの遅いふらんにつかまるほど赤ちゃんれいむはゆっくりしていなかった。 れみりゃはそばで無邪気に飛び回っている。 ふらんは終止不機嫌で、れいむ達に遊ばれた後見かねた女性になだめられていた。 「う゛ぅ゛・・・・・・・・・・・・・・・♪」 ふらんは甘えることにてれを感じているのか、女性と目を合わせなかった。 けれどもその横顔は頬がにやりと緩んでいた。 ある日昼ごろのことだった。女性がゆっくり達にいいことを思いついたと言って、ゆっくり達を庭に集めた。 彼女はときどき突拍子もないことをいいだす。 なにかな、どうしたの、ゆっくり達が皆庭に集まると、女性は背中に何かを隠してやってきた。 ふっふっふっと笑って、もったいぶっている。まるで悪役のような笑い方に、ゆっくり達は不安になった。 そこで女性はジャジャーン、といった擬音が聞こえそうになるぐらい、うれしそうに背中の物を目の前に 出した。それはギター。指でかき鳴らし、音楽を奏でる道具。 みんなで歌を歌おう。それが女性が考えたことだった。ゆっくり達はみんな今日のお仕事がまだ終わっていない と、ばつの悪そうな顔をしていたが、女性はあっけらかんとして、そんなこと気にしないでいいとでもいうように ギターを弾いていった。彼女はまりさに侵入されたとき、家に鍵をかけ忘れたことから考えられるように、 細かいことを気にしないというか、豪快というか、いい意味でも悪い意味でもいい加減というか、そんな人だった。 女性はみなを楽しませようと弾いた一曲。彼女の弾くギターはあまりいい腕ではなかったが、 その楽しそうな雰囲気によって、ゆっくり達はゆっくりせずに大はしゃぎしていた。 「ヘェーラロロォールノォーノナーァオオォー」 お母さんれいむは歌っている。音程は高く、以外に上手い。それにしてもこのれいむ、ノリノリである。 「おかーさんすごーい!」 「わたしもうたうー!」 「わたしもー!」 赤ちゃんれいむたちも一緒に歌う。 「へェーらろ・・・むりだわ、これ・・・」 ありすは完璧に歌えないと嫌なのか、早々と歌を止めた。 こういうところで変に意地っ張りである。 しかしそっぽを向きながら口をパクパクとさせ、次回に継げていた。次に歌うときのために必死に練習するであろう。 その顔は楽しそうだった。t 「うー、ゆっくりしね♪」 ふらんまでご機嫌だ。その周りには赤ちゃんれいむたちが集まっている。楽しいときには細かいことは気にしないものである。 姉のれみりゃは踊るように飛んでいる。 「ゆっゆー♪」 「あるーひー♪」 「ゆっくりー♪」「ヘロロォールノォーノオォー」「うっうー♪」「ちんちーん♪」「けろけろッ♪」 その日はゆっくり達の大合唱が森中に響き渡った。誰もがゆっくり平和にすごしていた。 いつしか女性はゆっくり達の母親のようなものになった。 「ぱちゅりー、たのしい?」 まりさはぱちゅりーに尋ねる。 もはや自ら動くことができなくなったぱちゅりー。そんなぱちゅりーは女性に抱えられて、みんなの姿がよく見える特等席に座らせてもらった。 「むきゅ♪」 ぱちゅりーはとても嬉しそうだった。まりさはぱちゅりーのこれほどまでに嬉しそうな顔をみるのは久しぶりだった。 そして、それが最期だった。 空気が澄んだ朝だった。ついにぱちゅりーが死んだ。最後には話すことさえできなくなり、 発作的に餡子を吐き出すようになっていた。ゆっくり達皆が心配そうに見つめる中、 まりさとありすはぱちゅりーのほほに自らのほほを当てて、その最後を看取った。 「ぱちゅりー、だいすきだよ・・・」 「ゆっくりしてね、やすらかにねむりなさい・・・」 ぱちゅりーは力なく微笑むと、 「むきゅ」 と返事をするかのように一言発し、事切れた。 ゆっくり達はこの家に来てはじめて家族を失う悲しみに涙した。 そして、女性はぱちゅりーを弔うことにした。火葬にしようかと思ったらまりさが強く反対した。 「あついのはよくないよ!もうぱちゅりーにいたいおもいをしてほしくないよ!!」 そんなまりさの姿を見て、ありすは何かを感じ取り、まりさをかばうように意見する。 「おねがい!ぱちゅりーがやかれるところをみたくないの!!」 結局、ぱちゅりーは土葬することにした。虫に食われないように厳重に箱につめて、家のそばに石を積み上げて墓を作った。 家のなかのゆっくり達はみな悲しんだ。別れはとても辛い。 それを見ていた女性はこうやってお墓を作ってあげると、いい子は天国にいけると女性はゆっくり達に教えた。 「てんごくってなに?」 「たべもの?おいしい?」 「ゆっくりできる?」 女性は教えた。天国とはいつまでもゆっくりできるところだと。ぱちゅりーはいい子だからそこに行けた、死んだ後には会えるから心配しなくていいよと言うと、 ゆっくり達は嬉しそうにしていた。 ちなみにわるい子は地獄という、ゆっくりできないところに行かされると釘をさしてしつけることもした。 まりさはぱちゅりーの帽子を形見としてとっておくことにした。 その日の夜、まりさは女性に向かって今までの行いをあやまった。 自分の事をずっと気にかけてくれていたぱちゅりー。 まりさが夜寂しい思いをしたとき、いつも体を寄せて寝てくれたぱちゅりー。 ぱちゅりーはまりさの全てだった。 ぱちゅりーが死んだことはとても悲しい。だけど彼女が幸せそうに死ぬことができたのが、うれしかった。 まりさだけでは、ぱちゅりーをあそこまでゆっくりさせることはできなかっただろう。 「おねぇざん・・・いまま゛゛でまりざはわるいごでごべんなざい・・・。おねぇざんのおうち゛をがっでにづがっ・・てて・・・、 まりざもうででぃぐね、ぱぢゅりーのこどありがどう、ありずをよろじぐね・・・」 まりさは初めて女性にあやまった。ぱちゅりーと共に生きるためとはいえ勝手にひとの家に上がりこんだこと、 それなのに追い返そうと体当たりをしたこと、それなのにぱちゅりーを弔ってくれたことなど、感謝をしてもしきれなかった。 女性は何も言わずまりさを手招きした。まりさはぱちゅりーがいなくなったから、外に放り投げられるのではないかと思った。 自分から出て行くつもりであったが、もし恩人にそのようなことをされたらと思うと怖くて仕方がなかった。 まりさは恐る恐るゆっくりと女性に近づいた。 ぎゅぅぅと、音が鳴る。つねられるときのように、しかしまりさはつねられていない。 女性は何も言わずにただまりさを抱きしめた。まりさは女性のあたたかさを感じた。 そして女性は膝の上に載せると子守唄を歌った。 ぽんぽんと優しく頭を叩きながら。 まるで人間の子供のおなかを叩いて母が歌うように。 その歌声は正直あまり褒められたものではなかったが、 まりさは耳を澄ませ、涙で真っ赤にした目を更に赤くしないように閉じて聞き入れた それはまぎれもなく母が娘をあやす姿そのものであった。 もうでていかなくていい。あなたもここのうちのかぞくなのだから。 そのような歌詞であった。 いつしかまりさの閉じた目から涙がつぅっと落ちていた。 まりさはこの日本当の家族になった。 「おねぇさん!これあげるね!おいしいやさいだよ!!」 ぱちゅりーが死んだ日からまりさは女性に対する不信感を完全に失っていた。 今では誰よりも女性の近くに擦り寄って、誰よりも働いている。 食事も女性からうけとるとき、 毒見をするようなしぐさをしなくなっていた。逆に畑で取れた野菜を女性にプレゼントするようになった。まりさは女性への感謝の気持ちでいっぱいだった ゆっくり達を受け入れてくれたこと、みんなが仲良くできるようにしてくれたこと、ぱちゅりーを弔ってくれたこと、 まりさは女性を母親のように感じていた。 それでも憎まれ口をたたいて女性につねられるのは相変わらずだった。 女性がまりさからもらった野菜を調理して、並んでご飯を食べる。まりさはとてもうれしそうだ。 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせ~♪」 女性はそんなまりさをみて微笑む。まりさもつられてえへへと笑う。 そんなまりさでも女性の体の変化には気がつかなかった。 女性がまりさに気づかれないようにしていたためである。 それでも症状はゆっくり進行していく。 ゆっくり達が目を覚ます。寝ぼけた女性を数匹がかりで起こす。今まで誰よりも早く起きたのに。 みんなで協力して食事をつくる。女の人とは思えないくらい食べたのに。 太陽の下で働く。休む回数が増えた 眠る。眠ったらいくら呼んでも起きない。かとおもえば、一日中起きている日もあった。 こうなってくると、ゆっくり達も気がつく。女性の体が悪いんだと。 だけど女性は人間の医者のところには行かなかった。 軽い風邪だから大丈夫だと。 幸せな日々にもいつしか終わりがやってくる。それはあまりにも突然の事だった。ある日いきなり女性が倒れた。 顔を見てみると赤い斑点が出て、 常に苦しそうな表情を浮かべていた。 1日、2日、3日、1週間、女性はどんどん体が悪くなっていった。 それでも彼女は医者に見せなかった。 まりさ達はかわるがわる看病に努めた。ごはんを運ぶもの、身体を井戸水で冷やして氷嚢代わりになるもの、 女性が行っていた家の管理に務めるものなど、皆女性のために働いた。 それでも病気の進行は止められなかった。 心配するまりさをからかうようにつねる手の力がとても弱くなっていた。 はじめてあったときは泣きそうになるくらい痛かったのに。 女性はもうすぐ死ぬ。ゆっくりたちが女性のベッドの周りに群がっていた、 みな不安そうな顔をしている。 まりさとありすはかつてぱちゅりーに対して行ったように自らのほほを女性に当てていた。 「いままでありがとうね・・・。おかあさん・・・」 ありすが泣きながら女性に話しかける。女性は心配するなと笑顔でうなづいた。 このとき女性は気がついた。まりさの底の一部分が感触が固いと、それはまるでパンを一部分だけ焼いた後のようであった。 以前人間に虐待されたのだろう。火傷によって焦げてしまったに違いない。 女性はまりさがこの先みんなと一緒にゆっくりできることを願った。 女性はまりさに対して二つの望みをつぶやいた。最後の言葉だった。 自分が死んだらここをみんなのおうちにしてね。 ゆっくり達を守ってね 、と そして女性はゆっくり息を引き取った。 まりさがみんなを導いて、みんなが天国にいけるようなゆっくりとして生きていけることを願って。 遺体はゆっくり達の手でぱちゅりーの隣に埋められた。 「おねぇさん、てんごくでもゆっくりしていってね・・・」 それからさらに1ヵ月後、ゆっくり達は女性のいいつけを守って生活していた。女性がいなくなってもゆっくり達は今までどおり、 むしろそれ以上に頑張って生きていった。まりさとありすがリーダーとなり、ゆっくりたちをまとめていた。 女性が生前そうだったように、行き場のないゆっくり達を受け入れ、いつしか家はゆっくり達の楽園となっていた。 そんなある日の夜、人間が尋ねてきた。壮年の男が数人いた。ゆっくり達は突然の人間に驚いた。 しかし以前女性に対してとてもやさしくしてもらっていたことを覚えていたゆっくり達。みな口々に歓迎している。 「「「「ゆっくりしていってね!!!」」」」 まりさは以前人間に虐待されたことを忘れてはいなかったが、女性に心を開いたことで以前より人間の事を嫌ってはいなかった。 そして女性の最後の言葉を思い出し、その願いをかなえることにした。 「ここはみんなのおうちだよ!! ゆっくりしていってね!!!」 うん、ありがとう、ゆっくりさせてもらうね。 男はそう答えた。きれいな瞳をした男であった。 男達はこの場にいるゆっくり達を見て、何か話し込んでいる。牙と片羽のないふらん、牙のないれみりゃ、 その他様々なゆっくりたちをじっと見た。 特に驚いていたのは、ありすをみたときであった。男の一人がありすに振動を与えた。 「なにしてんのよ、えっち!!」 ありすは不機嫌そうな顔をして去っていった。男は信じられない顔をした。発情しないありすがいるなんてと。 ところでここに女の人は住んでいなかったかな? そう男のひとりがゆっくりに質問した。 なんでも男達は女性の知り合いらしい。ゆっくり達は女性の事を話した。皆バラバラに話すので聞き取るのに一苦労であったが 、男達は彼女がどれだけゆっくり達愛されていたのか理解した。そして彼女が病気によって死んだことを伝えると、男達は悲しそうな顔をした。 しばらくうなだれ、考え込んでいた後、男の一人が意を決したようにまりさに話しかけた。 「おねぇさんのお墓はどこにあるかな。お墓参りをしたいんだ。」 まりさは女性のお墓に案内した。 石を積み上げられたあのお墓に。 ここでおねぇさんが天国でもゆっくりできるようにいっしょにお祈りをしようと思っていた。 人間も自分達と変わらないと、 そう信じていた。 数刻後、男は女性の墓を掘り返していた。隣にあるぱちゅりーの墓も同時に掘られている。 まりさは何が起きたのか理解できなかった。なぜこんなことをしているのだろう。 死んでゆっくりしている人をなんで無理やり起こすのだろう。 おねぇさんもぱちゅりーも天国でゆっくりしているのに、ゆっくりさせてあげないなんて・・・。まりさとありすは男に飛び掛った。 「やめて!!どうじてそんなことをするの!!」 「やめてぇぇぇ!!」 男のひとりがまりさとありすを押さえつけながら、段々と墓が暴かれてくる。 ゆっくり、ゆっくり、ゆっくり、ゆっくり、 悪臭がただよう。まりさは口から餡子を吐きそうになった。 まりさの頭にあったのは、生きていた頃のおねぇさんの美しい姿とぱちゅりーの青白い顔であった。 しかし、目の前にいるものは、 にてもにつかない ぱちゅりーってこんなくろかったっけ? どろだんご・・・ あのシろいむしってナに たくさんいるよ となりのオおきいのは ひと? もの? くろい あのおなkaカらでるデろでろってなに・・・ あnこ? 「あ・・・あ・・・あぐ・・ぐぺぇぇ゛ぇぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇ」 「ひどい・・・、なんで・・・」 あまりの衝撃にまりさはおねぇさんがどのような顔をしていたのか思い出せなくなった。 全く面影がなければそれでよかった。しかし着ている物、髪、顔の無事な部分と ぱちゅりーのそばに埋めた影響か、ところどころ虫に食われた部分がまりさの思い出の中のおねぇさんと混ざり合ってしまった。 おねぇさんといえば、目の前のくろくて、ぐちゃぐちゃで、べちゃべちゃなものしかわからなくなっていた。 男達は辛そうな顔をしながら女性を引き上げ、顔の確認をした。 男達の数人が泣いていた。リーダーらしききれいな瞳をした男が彼らをなだめた。 そしてしばらく話し合った後、男達は何かを決意した顔をした。男はまりさとありすを家の中に入れて、外から閉じ込めることにした。 男達の目的はこうであった。 ゆっくりから他の生物に媒介するウィルス、 感染方法はゆっくりを食べることと、ゆっくりを食べて感染した生物からの血液、経口感染であった。 そのウィルスはゆっくりと時間をかけて体内に潜伏し、発症の際は死亡率が40%を越えていた。 このウィルスにかかったゆっくりは先天的な奇型・変化をもって生まれる。 病弱さに拍車がかかったぱちゅりー、羽のないふらん、発情しないありすなどがそれにあたる。 男達はここに住んでいた女性の友人と加工場の職員で構成されていた。 彼女がゆっくりを襲っている犬からゆっくりをかばって噛まれ、このウィルスに感染していた可能性があること、 そのために森のはずれにある家で最後を迎えようとしようと失踪したこと、ついに家の位置を探し当てたこと、 最近わかったことだがもし感染していたら死体を焼却しておかないと動物によって死肉を漁られ感染が広がること、 彼女のような犠牲者を増やさないために感染源の奇型・変種ゆっくり達を炎によって滅菌処分する目的でこの場を訪れていた。 加工場の人間達にとってゆっくりは食料。それ以上でもそれ以下でもない。里の人に美味しく餡子を食べてもらいたい。 それだけを考えて仕事に励んでいる。しかし目の前のゆっくりが他の生き物に害を及ぼすと知ったとき、人を守るために自らの仕事を失うことを躊躇しない。そこには私情は一切なかった。 対して、女性の知り合いたちは私情によって動いている。彼女がまだ生きていた頃、世話になった者達の一部である。 彼らは彼女のような犠牲者を出さないようにゆっくり達を駆逐しようとしていた。それが彼女の意思とはかけ離れたものと知りながら。そんな彼らがやすやすと目の前の仇を逃がすはずがなかった。 この二つの思想を持つ包囲網からは、決して逃れられないだろう。 まりさは家の窓から女性とぱちゅりーが焼却されるのを見ていた。 まりさの母がわりであるおねぇさんとぱちゅりーはゆっくり燃えていった。熱いのは苦しいと思ってまりさは火葬をしなかった。 その結果があのどろどろの物体だった。 静かに、ゆっくりと炎は一人と一匹を包んでいく。その空気は以前おねぇさんとぱちゅりーが死んだときのお葬式のようであった。 違うのは、おねぇさんとぱちゅりーが穏やかな顔をしていなかったこと。 しばらく後、一人と一匹の遺体は真っ黒に焼き尽くされていた。 ぎろりと、男達がゆっくりが住む家のほうを向く。 まりさはきれいな目をしていた男と目が合った。男の目はもう曇っていた。疲れたような顔をして、生気を感じさせない。 それでもふらふらと家の方に近づいてくる。幽鬼のように。そしてそれにつられて他の男達もついてくる。 手に持っているのはたいまつ。 百鬼夜行そのものだった。 そして男達は、まりさたちの住む家目掛けてたいまつを放り投げて火をつけた。本格的に滅菌作戦を開始した。 「みんな、にげてぇぇぇぇぇぇぇ!!」 まりさが叫んだ。まりさは火の怖さを知っている。昔人間に捕まったとき、仲間と一緒に網の上で火にあぶられたことがある。 熱さから逃げるためぴょんぴょんと飛び跳ねる。しかし跳ねてもはねても火に接している底が熱くなる。 ほんの少し火に触っただけなのに体がこんがりと焼ける。それを見ている人間達は笑っていた。 誰が速く死ぬか当てる遊びをしていた。 まりさは運よく最後まで生き残り、死なずにすんだ。仲間達は焦げ付き、食べられもせずに放置されていた。 あの時と違うのは、人間達が遊びではなく、殺すことを目的として火を使っていることであった。 皆逃げる。しかしどこに逃げればいいかわからない。 部屋の中をひたすらうろうろとするばかり。パニックを起こしたゆっくり達は、部屋の中から出ることさえ考え付かなかった。 「ゆ゛ぎぃ゛ぃ゛ぃ!」「ゆ゛ぐえぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ !!」 放り投げられた火の近くにいた数匹のゆっくりが悲鳴を上げる。体に直接火を浴びたため、髪の毛から引火して体中が火達磨になっていた。 それはある怪異を髣髴とさせた。 鬼火と呼ばれる、宙を舞い、駆けずり回る火の玉。 違うことは、それが地を這うことであった。 「ゆ゛っぎゅり゛でぎな゛い゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!」 「ゆ゛っぐぃざぜでぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ!」 家の外に火達磨のゆっくり達が飛び出した。 もはや飛び跳ねることもできずにごろごろと地面を転がっている。 けれども火はゆっくり達の体を蹂躙するのをやめなかった。ごろり、ごろりと地面に向かって体をこする。けれども 全く効果がない。ひらすらに転がる。転がって転がって、何かにぶつかって止まる。それは男達の足であった。 ゆっくりにぶつけられた男は火にあおられ、熱さのあまりのけぞる。それをかばうように隣の男が火の玉を踏み 消す。その中にある命ごと 「ごぼっ!!」 「「ゆ゛っ!!!」 あっけない。あまりにもあっけない最期だった。これまで苦楽を共にしてきた仲間達。 同じ食事をし、共に笑い、泣き、一つ屋根の下に眠ってきた仲間達。ほんの数時間前までは隣で笑っていた。 ほんの数時間前までは。 今までこの家で体験した死とは違い、何の思いやりも見られない死は、ゆっくり達の心をぐちゃぐちゃに掻き回す。 仲間の悲鳴が現実から心を遠ざけ、炎の熱さが現実に心を引き戻す。ゆっくり達はパニックを起こした。 これから自分達にどのような運命が待ち受けているかをぼんやりと感じながら。 そう、悲劇はまだ終わっていない。これはほんの前奏にすぎないのだから。 「みんなはやくにげて!!ゆっくりしちゃだめだよ!!」 まりさはみんなを逃がすようにした。。 外には逃げられない。まりさは家の中の上の方へ、上の方へと 逃がすようにした。火は上に昇るが、地上は囲まれてしまったため、これ以外に逃げ道がないためである。 まりさは率先して皆を助けようと足掻く。懸命に足掻く。 おねぇさんに皆の事を頼まれたから・・・ 「ありすー、どこー!!でてきて!!にげるよ!!」 アリスの姿が見えない。はぐれてしまったのだろうか・・・。そういえば家の中に放り投げられたときから見ていない気がする。 ありすを助けに行くことも考えたが、まりさは目の前のゆっくり達を見て皆を逃がすことを選んだ。ありすならきっと大丈夫、 ありすが死ぬとは思えない。すぐにあの憎まれ口をたたいてくれるはずだ。 ゆっくり達は2階に上がり、1階より炎の進みが遅いことに皆少しほっとした。 しかしまりさは気を緩めない。皆に向き合って、大声で呼びかける まりさは火があっというまに広がることを知っていたので、皆を3階に誘導した。 「こっちだよ!うえにあがって!!うえにあがればゆっくりできるよ!!」 先陣を切り、階段の上に立って、ゆっくり達が階段を上ることを待っていた。 上が安全という根拠はないが、こうでもしないと皆パニックを起こす。 はやくこっちにくるように、恐怖に震えたゆっくりたちを励ます。 そのとき、 ビュッ!! ゴォォォォォォ!! いきなり外からたいまつが投げられた。窓ガラスを破り、階段を炎が包み込んでいく。ゆっくり達は散り散りになってしまった。 3階部分にはまりさしかいない。炎によって分断されてしまった。潜り抜けることは不可能だ。まりさにとっては不幸なことに、 皆を誘導するために急いで階段の前に行ったため、まりさのみ助かっていた。 まりさは階段の上から一部始終を見届けることになった。 「「「おがーざーん!だずげでぇぇぇ!!」」」 炎による恐怖で動けなくなった赤ちゃんれいむ達。 炎。それは母ゆっくりれいむの命への祝福をする優しいあたたかさとは違う、命を否定する激しい熱。 ぷるぷると振るえ、目の前の母をひたすら呼び続ける。 「わだじのごども”おぉ゛ぉ゛ぉ!!!」 母れいむは赤ちゃんれいむたちを庇おうと自らの口の中に入れた。 こうしておけばみんな一緒に逃げられる。そう思っての行動だった。 しかし誤算があった。口内に大量の子供達を含んだ母れいむはゆっくりとしか動けない。 はやく逃げなきゃこどもたちが死んでしまう、 はやく逃げなければ ぐらり そんな母れいむの思いとは裏腹に、母れいむの上に燃えた柱が倒れてきた。 大きい柱が ゆっくり、 ゆっくりと 「ん゛ん゛゛ん゛ん゛んん~~~~」 しかし子供達をくわえて動きの鈍った母れいむは更にゆっくりしていた。 ずりずりと這いずる様にしか動けない。 その目は落ちてくる柱をうつしていた。逃げようとすれば逃げ切れるようにも見えた。 じたばたともがき、目の前を見て、避けきれるまであと少し、あと少しのところまできた。 しかし、結局無理だった。あと1メートルほど進めば避けられたのに、それもかなわず柱が母れいむの頭を捕らえた。 ぐしゃり 母れいむは横に3倍ほど広がってしまった。悲鳴を上げる暇さえなかった。餡子が飛び散り、ぴくぴくと痙攣している。 口の中の子供達はつぶれて混ざり合っているだろう。 もう二度と母れいむの美しい歌声を聞くことはできない。 炎で分断された更に別の場所、移動の遅いゆっくりふらんは自分を助けようと近づいてくる子れいむたちとれみりゃを追い払っていた。 「ゆっくりしね!!!ゆっくりしね!!!ゆっくりしね!!!ゆっくりしね!!!ゆっくりしね!!!ゆっくりしねぇ!!!」 鬼気迫る形相でこっちに来るなとひたすら吼え続ける。しかしそれでもゆっくり達はふらんにむかっていく。 ふらんをくわえると、少しでも火のない方向目掛けて引きずっていた。 「ふらんちゃん、ゆっくりしちゃだめだよ!」 「いっしょににげよ!」 「あきらめちゃだめだよ!」 「う゛~、ごぁい!こぁ゛い!いっしょににげる!おいで!!」 しかし炎は容赦なくふらんとゆっくり達を包み込む。 まるで焼き栗。炎の中で小さな塊がぱちぱちとはじけていく。それとも焼き芋とでも言おうか、餡子が焼けるいいにおいがあたりに広がっていた。 炎に慈悲はない。ただ全て燃やすだけ。そこには善意も悪意もない。 再生力の高いふらんとれみりゃはすぐには死なない。目の前でれいむ達が焼き死ぬところをゆっくりと見ることとなった。 最初はあまり気に入らなかった。自分がおもちゃにされているようでイヤだった。食べてやろうと思ったことも一回や二回じゃない。 だけど、だんだん一緒にいると楽しくなった。からかわれるのも悪くなかった。自分がからかわれるのに慣れてしまっただけなのか、 それともなにか別の理由があるのかわからない。ただ、ふらんはいつしかみんなの笑っている顔が大好きだった。 「あぢゅいよ゛おぉおぉ゛ぉ゛ぉぉ」 「ゆっぐりじでてよぉ・・・」 「ふら゛んおね゛ーじゃんっっっ!だずげでぇぇぇ」 そんな仲間達が、自分を助けようとしたから、ふらんを助けようとしたから、苦しそうな顔をして消えて行く。 真っ黒になりながら。そしてれいむ達が焼き死ぬと、今度はれみりやとふらんがゆっくりと死ぬ番だった。 「う゛・・・・、」 ふらんの目の前でれみりゃが焼けていた。普段の無邪気な表情とはかけ離れた苦悶の表情だ。 いつも自分の近くにいた姉。いつもへらへらとして弱そうで、ずっと姉扱いはしていなかった。 だけど、そんな自分を、ふらんをれみりゃは助けようとしてくれた。 れみりゃは紛れもなく自分の、ふらんの姉だった。 「ゆっくりしね・・・ゆっ・・・」 ふらんは何もできない自分がうらめしかった。 結局、最期まで姉扱いをしてあげることはできなかった。 生まれて初めてふらんは泣いたが、涙は蒸発してしまい、誰にも見られることはなかった。 炎が辺りを包み込み始めていた。 ゆっくりできないところが地獄なら、ここはまさにそれであった。地獄というコンサートホールでゆっくりの悲鳴の大合唱が奏でられている。 音の大きさはバラバラ、音程はバラバラ、リズムもバラバラ、共通しているのは苦痛を表現した歌だということ一点のみであった。 まりさはこのときほど自分手がないことをうらめしくおもったことはなかった。 耳がふさげないため、ゆっくり達の悲鳴があますことなく聞こえてくる。 「ゆ゛っぐり゛い゛い゛い゛ーー!!」「ゆ゛っぐり゛でぎる゛どお゛も゛っだどに゛い゛い゛い゛い゛い゛いい゛い゛い゛!!」 「ぐぉぼ!!」「ゆるじでぇ!! あづいよぅゆうぎゃあぁあ゛!!!」 「どおじでぇえ゛ぇぇっごんなごどずるのぉぉ゛お!!!」「ゆ゙ゎああああああああ」 「おねぇざんだずげでぇぇぇ」「ぶぎい゛い゛い゛い゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!」 「わからないよ!!!わからないよおおおおお!!!」「ゆっぐりだずげでええええ!!!」 「 ゆ゛っぐり、じだい、じだいよおおおお!」「びゅっぐりゃぃぃぃ!!」「おぎゃぁぁぁざぁあぁぁん!!」 「いや!ゆっくりしてよう!や・・・あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」「がぼッ、ガボボッ、い゛や゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!」 「し、じじにたくないよ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!」「なんで!なんで!!なんでえ゛え゛え゛え゛え゛!!!」 「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っ!?」「んほおおおおおおおおおおおおお!」「う…うあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!」 「ぢんぼぼぼぉおぉおおっ!!!」「う゛っ!う゛っ!う゛っ!う゛っ!う゛っ!う゛っ!」 あ゛づい゛よ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!」 「ゆーーー?!い゛や゛だぁぁぁぁぁぁ!?あづいいぃいぃぃいl?!」 「ひ゛ぃぃい゛い゛ぃあ゛あ゛あ゛あ゛ぁあ゛ぁあ゛ぁぁぁあ゛ぁっ!」「ゆっぐりじだがっだよー!!!!!」 「……ゲロ゛ォォオゲロオォオオォっ!」 おがあざんどご!? み゛ん゛な゛どごぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!!? みぇな゛いぃぃ!!!」 「 ゆ゛ゆ゛っ゛っ゛ーーーーーーーーー!!!!」「あ゛づ!! け゛む゛い゛よ゛お゛ォ!!!」 「おうち゛でみ゛ん゛な゛どゆっぐり゛じでだだげな゛のに゛い゛い゛い゛い゛!!!!!」 そして大合唱が終わりを告げた。まるで焼ききれたカセットテープのようにぷつりと音が消える。 もう誰も生き残っていないだろう。 みんなと分断されてからあっという間の出来事だった。 だけど、みんながどう死んだか、その様子は全く同時の出来事だったが、全てまりさの目に映り、記憶に刻まれた。 目をそらせなかった。よって、一匹一匹、全てのゆっくりの死に様が余すことなく焼きついた。 結局おねぇさんとの約束を破ることになってしまったことになって、申し訳なかった。 そしてそれ以上にみんな大事な仲間だったのに、大好きだったのに守れなかったことを後悔した。 まりさは死を目の前にして、それでも火から逃げることを選んだ。 火は・・・・・・・・・・どうしても怖かった。 3階にたどり着いた。目の前にありすがいた。 いなくなっていたかと思ったありす。まりさが気がつかないうちに死んでしまったのかと思ってしまった。それは一番嫌だった。 とにかく無事でいてよかった。生きていてくれてうれしい。 「ありす!いままでどこにいってたの!!しんぱいしたんだよ!!」 「わるかったわね・・・、みんながにげるためのどうぐをつくっていたのよ。それよりみんなは・・・」 「しんじゃったよ・・・。れいむたちもふらんもれみりゃもみょんもちぇんもみんなみんな!!ひでやかれちゃったよ・・・」 ありすはまりさから目をそらした。生き残っているのはまりさとありすだけ、 ありすは一瞬呻いて、暗い顔をしたが、急がないとまりさたちも危ない、 ありすはまりさをある部屋に誘導した。煙突のある暖炉とつながっている部屋だ。 煙突の下にハンモックがあり、傘がついた大きな箱のようなものが乗っていた。 「まりさ、まずこのうえにのって」 まりさは箱の中に入れられた。結構広かった。 「ゆ?これからどうするの?えんとつからにげようとしても、そとにはにんげんがいるし、えんとつもふさがっているよ!」 「いいからここでじっとしていなさい!そうすればとおくににげられるわ!」 ありすの作戦は、まず煙突を発射台にするため、その中間あたりに箱とハンモックで弾を作り、 その下に部屋との仕切りをして、部屋の中を密閉する。 そうすると熱によって膨張した部屋の中の空気が逃げ場を求める。 下の仕切りが燃え尽きることで外に空気が逃げる。その勢いを利用して箱ごと飛び上がるというものであった。 性欲を失い、リミッターがはずれたためか、ありす種の知能は本来の力を発揮していた。まさに賢者そのものであった。 「よくわからないけどすごいね!はやくにげよう!いっしょににげようよ!!」 「まってて、まずこれ、ぱちゅりーのぼうし。こんなだいじなものをもっていかないなんてまりさったらほんとにばかね・・・」 「ゆぅ、まりさはばかじゃないよ・・・。でも、ありがとね!ぱちゅりーもいっしょだよ!」 「それから、これ、わたしのへあばんど、もしこれをなくしたらおぼえてなさいよ・・・」 「なんでありすのへあばんどをくれるの?ありすがもっていればいいのに!?」 「それから、あなたのこときらいじゃなかったわよ・・・。」 ありすはまりさのほほに自分のほほを触れさせた。人間が今生の別れの際の抱擁を行うように・・・ 「ありす、どうしちゃったの!!なんかおかしいよ!!ゆっぅ・・・ゆぅ!」 ありすはいきなりまりさ目掛けて体当たりをした。 「ゆぇ!」 ありすは泣きながら 「ゆ゛・・・」 何度も 「あ・・・ありす・・・」 何度も そしてまりさは動けなくなっていた。 「このしかけはね、だれかがふたをしたでしめるこがひつようなの・・・じゃあね、まりさ。そこでゆっくりしていってね・・・」 傷ついてこの家に来たありす。ここに来るまで、その生活は決して幸せなものではなかった。 一日の食事に泥水をすするのみのことが珍しくなかった。 ぼろぼろになって、体を治す暇さえなく這いずり回る日々。 だけど決して弱みを見せない。見せたくない。 そんなありすがゆっくりできたのがこの家。初めての仲間。最後に残った家族。 ありすは自分の命の使い方を決めた。 ありすは部屋の中に残った。まりさを助けるために。まりさは動けず、そんな彼女の姿をじっとみていることしかできなかった。 そして炎が部屋に侵入してきた。ありすは仕切りをした。まりさはありすの姿が見えなくなった。 姿が見えなくなってもありすの声が聞こえてくる・・・ 「ひぎゃぁ゛ぁ゛ぁっぁ゛ぁぁぁ!!!あ゛ぢゅ゛いぉよぉぉ゛ぉぉ!!」 まりさは知っている。火による熱さはは決して我慢しようとしてできるものではないと・・・ 「ぱじゅりぃ゛ぃぃだずげでぇ゛ぇぇ!!おねぇざあん゛ん゛ん゛んんん゛!!じにだくないよぉおぉ・・・」 絶対に聞きたくなかった声が聞こえてくる。ありすが今まで一度も出したことのないようなひどい声だ。 「ま、まりさ・・・ゆ・・・・ゅぅ・・・ゅ・・・ゅ・」 最期にありすの頭に浮かんだのは、女性に連れられ、まりさとぱちゅりーに始めて出会った光景だった。 そして仕切りが燃え落ちて、逃げ場を失った空気によりまりさは煙突から発射された。 ある木の空洞にまりさはいた。あの家に住む前に住処にしていた家だった。ここはまりさ『だけ』のおうちだ。 結局あの日まりさは逃げ切るのに成功した。 煙突より遠くに飛ばされ、気がついたらもう夜が明けていた。 皆と住んでいたあの家に戻ると、全てが灰になり、何も残っていなかった。 畑も、ギターも、そしてみんなの死体も。 まりさはあの日から、起きていると仲間たちの悲鳴を思い出すためにゆっくりすることができなかった。 まりさにとってゆっくりするために必要なものはおうちではなかった。 仲間が欲しかった。仲間さえいればどこでもゆっくりすることができる。 しかし今となってはゆっくりはまりさだけになってしまった。人間たちの滅菌作戦によりこの一帯のゆっくりは全滅した。 だれかと一緒にゆっくりすることはもうできない だからといって人間とはもう会いたくない。おねぇさんのようなやさしいひととおじさんたちのような怖い人、 どっちが本当の人間かわからなくなった。やさしくされた後に裏切られるのが怖くなった・・・。 だったら死んでしまえばいい。そう思ったことも何度もあった。しかしそのたびにまりさは結局死にきれない。 死ぬのは怖かった。おねぇさんのお願いであったみんなを守ること、それができなかったまりさは地獄に落ちるだろう。 でも、ぱちゅりーの帽子とありすのヘアバンドをかぶって眠るとみんなとの楽しかった日の夢が見れる。 起きているときは仲間達の惨たらしい最期しか思い出せなくなったが、夢の中では現実では決してありえない、幸せな光景がある。 まりさはおねぇさんに抱きしめられて、 ぱちゅりーが元気に外であそんで、 ありすが意地を張って、 れいむ親子が歌って、 ふらんがからかわれ、 れみりゃが飛び跳ね、 ゆっくり達みんなが笑っている。 そんな夢。 まりさは夢のほうがいいのなら、ずっと夢を見つつけることを選ぶ。現実なんかどうだっていい。 ゆっくりねむろうとまりさはまた夢をみようとしたとき、家の中に蛇が侵入してきた。うっとおしい。せっかくいい夢をみていたのに。 まりさはぼんやりと、二度と誰かに「ゆっくりしていってね」といえる日はこないと思った。 「ここはまりさのおうちだよ!ゆっくりでていってね!!」 ------------------------------------------------------------------- 平成20年8月17日 最後にケジメをつけるため、加筆修正しました。 これにてssを書くことを引退します。作者の方々のご活躍をお祈りして、 ゆっくりスレのこれまで以上の発展を願っています。今までありがとうございました。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/242.html
「ゆっくりしずかにはいろうね!!!」 「うん、しずかにはいろうね!!!」 近くにゆっくり達が住む森がある農村。 対策はしているが、やはりゆっくりは進入してくる。 この日も、五・六匹のゆっくり魔理沙が人間の家に侵入しようとしていた。 「ホワッツ! お前達ナニシテルンデスカー!!!」 直ぐに人間に見つかった。 ここで、大抵のゆっくりなら直ぐに人間の癇に障ることを言うのだが、今回のゆっくり達は違った。 「ゆゆ!! おかーーさんがあかちゃんをうんだから、たべものをさがしにきだんですーー!!」 「あがじゃんにえいようづけないとしんじゃうからーー!!」 なるほど。 よくよく見ると、確かにその集団には、小さい赤ん坊はもとより、お母さん魔理沙らしき存在もいない。 このゆっくり達の言うとおり、巣の中ではお母さん霊夢と赤ちゃん達がお腹をすかせて待っているのだろう。 「なるほど。なら、今回だけだぞ。ほら、これ位ならくれてやる」 それならば、と男は幾つかの野菜とお菓子を渡してやった。 「ゆゆ!! おじさんありがとうね!!」 「おじさんはやさしいから、きっとゆっくりできるね!!!」 思い思いの感想を残し、ゆっくり達は男の家を去っていった。 ―― 「ゆゆ!! おかーさん!! きょうはこんなにあつまったよ!!」 「ゆゆ!!! すごいね!! さすがだね!!!」 「すご~い!!」 「いっぱいたべれりゅね!!」 戻った巣の中には、お母さん魔理沙と赤ちゃん達。 それに沢山の食べ物。 野菜や果物から、果てにはお菓子まで。 およそゆっくりには準備できないような代物まで、沢山の食べ物が山積みされていた。 「むっしゃ!! おいし~~ね!!」 「うまくいってるね!!」 「あたりまえだよ!! まりさたちゆっくりは、みんなとってもかわいいんだもの!!」 手当たり次第に食べ物を口に運んでいる一家は、昨日の事を思い出していた。 この森のゆっくり達がドンドン人間に殺されている。 理由は人間の家に入ったり、畑の食べ物を勝手に食べたりしているからだ。 しかし、森の中にゆっくり全員を賄える程の食料はない。 そこで、一家の母親達が集まり、相談していた時に、この森には珍しいゆっくりアリスとパチュリーの夫婦がこう進言したのだ。 「むきゅ!! おかあさんとあかちゃんをいえにおいて、こどもたちだけでにんげんのいえにはいればいいの!!」 沸き起こる反論を抑えながら、パチュリーは大まかに次の事を説明した。 曰く、もし掴まったらお母さんが赤ちゃんを産んだといえば良い。 曰く、そういえば美味しい食べ物をもらえる可能性が高い。 曰く、誰かが巣に残っていればよそ者に巣を取られないで済む。 そして、最後にアリスが言った言葉が引き金となり、森のゆっくり達はこの作戦を行う事に決めたのだ。 「だいじょうぶ!! ありすたちはみんなとってもかわいくてうつくしいから、にんげんたちにはどれもかわいくうつるの!!!」 最後の問題、人間達が同じ顔のゆっくりを見て怪しまないのか、それをこの言葉で封じたアリス。 会議は直ぐに終わり、パチュリーと寄り添って巣に帰っていった。 それが数日前の事だ。 そして、次の日から実践をし、今ではどの巣もこのように大量の食べ物を蓄える事ができた。 「ゆっゆ~~~♪ よかったね!!」 「あしたはみんなでゆっくりしようね!!!」 「「「「ゆっくりしようねーーーー!!!!!」」」」 これだけの食料を何時でも手に入れることが出切る様になった以上、毎日せっせと集める必要はなくなった。 必要な時に集め、必要な時に食べる。 ゆうに一ヶ月程度の蓄えは出来た、当分は大丈夫。 森のゆっくりは、全員そのような考えだった。 一度上手くいったら大丈夫。 もう相談の必要はない。 それがゆっくり達の心情だった。 ―― 「むきゅ? そういえばありす?」 「なぁ~に?」 「ぱちゅりーがこどもをうんだときも、にんげんにもらったの?」 「!! そうだよ!! ありすがはくしんのえんぎでもうじまぜんがらーー!! っていったらたべものをたくさんくれたの!! ありすのえんぎはとってもさいこうだったの!! えんぎは!!」 「むきゅ」 ―― そして、先の霊夢が男の元を過ぎ去った後、人間たちもそのからくりに気付いた。 時間にして数日。 この数日間で、なんか匹ものゆっくりが同じ台詞を話せば、奇妙に感じるのは当然。 あっという間にそのからくりがバレタのだ。 そして、人間はゆっくり達にある方法で復讐する事にした。 ―― 「ゆゆ!! おがーざんがあがじゃんをうんだがらたべものをあづめでだのーー!!!」 数日後、再びあの魔理沙一団が男の下へやってきた。 そうやら、単純で涙もろいオジサンにカテゴライズされたらしい。 口調こそはしっかりしてるが、表情は泣き顔と笑顔の混ざった奇妙な顔を作っていた。 「そうだったのかい。それじゃあこれをもっていきな」 前回同様、大量の食べ物を渡してやる。 しかし、今回は殆どがくず野菜だが。 「そうだ。未だ食べ物がいっぱい有るから、それを置いたらまたおいで」 賑やかに去っていく魔理沙達に、男は大声で伝える。 「ゆゆ!! わかったよ!! ゆっくりいくよ!!!」 それに笑顔で答え、森へ続く道へと消えていった。 「やったね!! こんかいもせいこうだね!!」 「おじさんは、きづいてなかったね!!!」 「まりさたちがかわいいからだね!!」 「「「ゆっくり~~~~♪」」」 沢山の戦利品を運びながらの道中、その魔理沙達は最後の帰路に着いた。 ―― 「またいっぱいもらってくるからね!!!」 「おかあさんもあかちゃんもゆっくりまっててね!!」 「ゆっくりがんばってきてね!!!」 「ゆっきゅりまってるりょ!!!」 一家は最後の挨拶を交わして、交わる事のない岐路に進んでいった。 ―― 「ゆっくり~していってね~~~♪」 「こんどはぁ~なにを~もらえるのかな~~♪」 「「「「おっじさぁ~ん!! まりさたちがきたよ~~~♪」」」」 「やぁ、良く来てくれたね」 「「「「やだなぁ~おじさんは。まりさたちにたべものをくれるんでしょ!!!」」」」 「そうだったね」 そこで待っててね、と言い残して一旦中に消えた。 歌を歌いながら待つこと数分、大きな袋を携えて男が戻ってきた。 「この袋の中に入ってるよ。遠慮しないで沢山持っていってね」 「えんりょなんかしないよ!! ぜんぶまりさたちのだよ!! みんなもっていくよ!!!」 男に適当な返事をしながら、我先に袋の中に入り込んでいく。 全員が入った事を確認し、男は何食わぬ動作で袋を閉じる。 そして歩き出す。 「ゆゆ!! おじさん!! からっぽだよ!!」 「ここからだしてね!! はやくたべものもってきてね!!!」 「ゆっくりさせてあげないよ!!!」 「ダメだよ。お母さん達はもう居ないんだから。それに昨日の分の食事代も貰ってないしね」 淡々と袋越しに話しかけていく。 「だから、加工場に持って行ってお金に換えてもらうんだ」 その言葉を話し終えると、中のゆっくりも理解したようで、大声で騒ぎ始める。 「いやだーーー!! ゆっぐりさぜでーーー!!!」 「ゆぐりじだいよーーー!!」 「どうじでーーー!!!」 帽子が取れようが、髪がボサボサになろうが関係なく暴れまわる。 「だまれ!!」 「ゆびゃ!!」 「あああ!!!!」 必要なのは中身なので外見は関係ないのだ。 中が黙った事を確認すると、そのまま加工場へと足を進めた。 ―― 子供達が出て行って直ぐに、お母さん魔理沙の所に男がやって来た。 「こんにちは」 「ゆ? おにーさんはゆっくりできるひと?」 お母さんと赤ちゃん魔理沙が、大きなクリクリした目で男を見つめてくる。 「ううん。できないひとだよ」 「ゆ?」 「子供達は皆処分したから、最後に君達を処分しに来たんだよ」 言うが早いか、むんずとあかちゃん達を取り出し、物凄い勢いで入り口を塞いでいく男。 「それじゃあ、君はそこでゆっくりしんでね!!」 あっという間に打ち付けた男は、中に居るお母さん魔理沙に呟くと、赤ちゃん達を残してそのままもと来た道を戻っていった。 「あああーーーー!! まりざのこどもたちがーーー!!! どうじでーーー!!!」 「ゆ?」 「ゆ?」 中では、自分の子供達の末路を知った母親の声。 外では、自分達に何が起こったのか理解できていない赤ちゃん達の声。 「あああーーー!! !! ぞうだ!! あがじゃん!! あがじゃんはぞごにいるの!!!」 「ゆ? いりゅよ!!」 「ゆっくりいりゅよ!!」 「おがあさんはここからでられないの!!! ぱちゅりーーをよんできてね!!」 「ゆ!! わかっちゃ~♪」 「ゆっきゅりまってちぇね!!」 これで助かった。 お母さん魔理沙はそう思った。 パチュリーがきてくれればここから出られる。 そうすれば残った赤ちゃん達で子供達の敵が討てる。 そう思うと、気が楽になってきたお母さん魔理沙は、乱雑に積み上げられていた食べ物に駆け寄って咀嚼し始めた。 「う~むっしゃむっしゃ♪」 赤ちゃん霊夢がパチュリーの所から帰ってくるまで数日かかるかもしれない。 でも、こんなに食べ物があるなら大丈夫。 「むっしゃ。これうめぇ!! しあわせ~~~♪」 食べ物の中に埋もれて、お母さん魔理沙は至福の時間を味わっていた。 ―― 「ゆっくりいこーにぇ!!」 「ゆ~~~♪」 「あちゅいね~~」 「ゆ~~!! あそこのきのしたはしゅずしようだよ!!」 「ゆ!! ほんとうだ!!」 「ここをまりしゃたちのお~ちにしようね!!」 「まりしゃたいなにしてちゃんだっけ?」 「しりゃない♪」 「「「「「ゆっくりしていってね!!!」」」」」 ―― 「むきゅ!! こどもたちおそいねー」 「ゆ!! きっとかわいいありすとぱちゅりーのこどもたちだから、あちこちからひっぱりだこなのよ!!!」 ここはパチュリーとアリスの家。 同じように、子供達に狩りをさせていたのだが帰ってこない。 「こんにちは、ゆっくりしているかい?」 「「!!!」」 代わりに入ってきたのは人間の男。 先ほどの言葉とは裏腹に、当然のように二匹は男を警戒し始める。 「むきゅ!! おじさんなにかよう?」 「ここはぱちゅりーとまりさのおーちだよ!! なにかようなの?」 「そんなに警戒するなよ。おじさんはお菓子を持ってきただけだよ」 「うそだよ!! にんげんはうそをつくんだよ!!」 「むっきゅーーー!!! むぎゅ? ぎゅーーーー!!!」 「そうかい。残念だよ」 パチュリーを勢い良く踏み潰す。 「ああああ!! ぱじゅりーー!! おじざん!! なんでごんなごとするのーー!!!」 「だって、人間を疑るような悪いゆっくりは駆除しないとね」 そう言って、残っている足でアリスも踏みつける。 「ぶじゃ!! あああ!!!」 「ああそうだ、子供達も皆加工場に持って行ったよ。数が多かったから、潰して押し込めて運んでいったけど、さすが饅頭だね!!」 「む……ぎゅーー!!」 「どうじでーー!! ありずのごどもだじ……が!!」 「ああそうだ、最近ゆっくりの子供達に食べ物を物乞いさせる行為が流行ってたけど、それって君たちが考えたの? 正直に答えてね」 喋りやすいように一旦足の力を弱める。 「むじゅ!! ぞうです!! ぱちゅりーたちがかんがえましたーー!!」 「しょうじきにいいましたーー!! だからゆるじでーー!!」 「ご苦労さん。じゃあ死んでね♪」 「なんでーーー!!」 「むっじゅーーーー!!!」 それが、この森に住むお母さん達の最初の断末魔だった。 それから数日後、例の魔理沙の巣の中でも同様の叫び声が被疑機わたっていた。 「ゆーー!! ぐざいーー!!」 最後に男が持たせた中に、生きの悪い魚が入っていた。 沢山の野菜くずで見えなかったのだが、今になって漸くお目見えしたのだ。 奇しくも夏真っ盛りのこの時期、全ての食べ物を巻き込み、オドロオドロしい匂いを撒き散らせながら、魔理沙を餓死へと追いやっていく。 「うぐーーどうじでーー!! なんでーーー!! だべものはどごにいっじゃっだのーー!!!」 これから数日間、この中で空腹に耐えながら、やがて自分もこの中に仲間入りする事だろう。 「あがじゃんーー!! はやぐもどっでぎでーーー!!!!!!」 ―― 人々が、共同で仕返しをした後の事。 その後の生活は今まで通りだった。 既に森には、赤ちゃんゆっくりしかいない。 「ゆっゆ~~♪」 「ゆ!! おやさいがいっぱいあるりょ!!」 「ゆ? はいりゃにゃいよ!!」 「「「「ゆっぐりじだがっだーーーー!!!!!」」」」 先代が残したシステムを覚えているゆっくりなど居るはずもなく、そうで出掛かり駆除され、巣を知られて駆除させ、他のゆっくりに巣を乗っ取られる。 そこの森にでもある光景がそこにも有った。 やがて、赤ちゃん達が育てば、今まで通りのゆっくり一家が沢山できることだろう。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1125.html
電撃の強弱を調節できるスタンガンを手に入れたのでゆっくりに味わわてみた。 事前にゆっくり出来る道具であると説明すると何の疑いもなく背中をこちらに向けてくる。 まずは最弱だ。説明ではビリビリしびれる程度だそうな。スイッチオン。 「ゆ”っ!?」 ゆっくりの体がびくっと震える。 そして少しすると「ゆゆ~、ゆゆぅ~」と情けない声を上げだすのでゆっくりの顔を見ると、 口を半開きにして、瞳を潤ませて、頬を赤く染めて感じていた。 ゆっくりは振動を加えると性的に感じるのだが、電撃のビリビリもそれに近いようだ。 それにしてもこのゆっくりエロエロである。 このまま達するまで続けてもいいが、賢者モードに入られても困るのでここらでやめる。 そうするとゆっくりは慌てて 「ゆっくりさせてぇ~! やめないでねぇ!」 なんて甘えた声を出しやがる。 「OK、まかせろ」 ここで威力MAXにしたスタンガンを押し当ててやるのだ。 「!!!」 今度は声すら出ない。一瞬体が縦長になり、そのまま動かなくなった。 死んだか。 そう思ってしばらく見るとゆっくりは目が覚めて一言。 「すっきりー!!!」 そっすか。苦しめるつもりがすっきりされるとは残念だ。 しかしよく見るとスタンガンを押し当てた場所はしっかり焦げていた。 体の痺れが抜けるにつれてゆっくり痛がるゆっくり。 そんなゆっくりを見てようやく私はすっきり出来た。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/364.html
※後半ぐらいから多分大人向け ゆっくりが日本を中心に存在し始めてから数年。 今やゆっくりは犬や猫といった大衆ペットの一種とされ愛されていた。 私もゆっくりを飼っている一人だ。 ただし愛する方法は人とは違うのだが。 今日もゆっくりのためにゆっくり用のマッサージチェアを買って家に帰ってるところである。 今日はどうやっていじめてやろうか。 「ただいま」 「ゆ! ゆっくりしていってね!!」 出迎えてきたのはゆっくり魔理沙だ。こないだゆっくり霊夢に飽きたので別に拾ってきたゆっくりだ。 「おなかすいたよ! ごはんよういしてね!!!」 「まあ、待ってよ。今日は魔理沙のためにいいものを買ってきたんだ」 「いいもの? みせてね! ゆっくりはやくみせてね!!」 ぴょんぴょんと足元を跳ねてせがむまりさ。 私は楽しみに周りを飛び跳ねるまりさを片目にマッサージチェアをセットして説明書を読む。 えーと、警告やら何やらはいらないからぽーい♪ …リモコンでON/OFF。そして強弱のモードがある、と。 ゆっくりは揺らすだけですっきりするからな。機能としてはこんなものだろう。 「これでゆっくりできるの!? ゆっくりさせてね!!」 「それじゃあここにゆっくり座ってね」 「ゆっくりすわるよ!」 マッサージチェアに座ったゆっくりをベルトで固定する。 これなら何をやってもゆっくりは逃げられない。 「ゅ! うごけないよ!! ゆっくりはなしてね!!」 黙ってスイッチONする。まずは弱モードだ。 するとマッサージチェアが震え始めた。 「ゅ? ゆ、ゆゆ…ゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆ」 「どう? ゆっくり出来た?」 「ゆ…っくりできるよぉ…」 早速顔がとろんと蕩けてきていた。 「気持ちいいか?」 「きもち…いいよぉ…」 こりゃマッサージチェアと言うよりも自動オナヌーマシンだな。 「ゅゅ…ゅゅゅ~♪ く、くるよぉ…ゆっくりくるよぉ!」 「思ったより早いな」 急いでスイッチをOFFする。 ブブブ…ブ。止まる振動。 そしてまりさは突然ゆっくり出来なくなってキョトンとしている。 「ゆ!? なんでとめるのぉ! ゆっくりさせてぇ!!」 「えー、なんでさー」 「ゆー!!!いかせて!ゆっくりいかせてぇ!!」 「しょうがないなぁ。じゃあ本当にゆっくりといかせてあげるよ」 ゆっくりとイきたいのが要望なら仕方ないな。私はまりさの言う通りにしてあげることにした。 スイッチをONする。 「ゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆ~♪」 再び気持ちよくされてだらしない顔をする。 涎まで垂らして本当に気持ち悪い顔だ。 「いくときはちゃんと言ってね」 「ゆー! そろそろ…いっちゃうよぉ…」 さっき中断されたせいなのだろう。さっきより達しそうになるのが早い。 「い、いくよ! ゆっくりすっきりしちゃうよぉ!!」 はい、スイッチOFF。 止まる振動。だらしない顔のまま固まるまりさ。 「なんでぇぇぇぇぇ!? すっきりざぜでよぉぉぉ!!」 「えー、ゆっくりいかせてほしいんでしょ?」 「いやぁぁぁぁゆっくりしたくないよぉぉ!! すっきりじだいぃぃぃぃ!!!」 「そこはゆっくりしようよ」 「おにいさんとはゆっくりできないよ!! もうおうち帰る!!」 「悲しいなぁ」 まりさの波が引いてきたようなのでスイッチON。 「ゆっ!? ゆっくりぃぃぃ♪」 再びの振動に引いた波がまた押し寄せて気持よがるまりさ。 「ゆっくりぃじゃないよ。おうち帰りたいんじゃなかったっけ?」 「か、かえるぅ…帰りたいけどすっきりさせてぇぇぇ」 「体は正直だな。口からいやらしい汁(涎)がどんどん溢れてきてるぞ」 「あああ…いわないでぇ、ゆっくりいわないでぇ」 「機械相手にゆっくりされるなんて汚らしい饅頭だぜ」 「くやしいよぉ! でも…いっちゃう!!」ビクビクッ あ、やべ。 「すっきりー!!!」 あー、クリムゾンごっこしてたらすっきりされちゃったよ。 こうなったら仕方無い。モード・強だ!! ブブブブブブブブブ!!!! 弱モードとは比べモノにならない震動でゆっくり魔理沙をマッサージするチェア。 「ゆぁっ!? ら、らめだよぉぉぉ!!! すっきりした後はゆっくりしすぎちゃうよぉぉぉ!!!」 「なんだよ、ゆっくりしすぎちゃうって。イきそうって言わなかった罰だよ」 「い、いったよ! いっちゃうっていったぁぅんっ」 そうとう感じてるようで今までより激しい反応を見せるまりさ。いった直後は敏感なのかー。 「だ、だめだよぉ!! ゆっくりこわれちゃううぅぅぅ!!!」 ゆっくりの瞳はすでに焦点が合ってなかった。さらに顔を真っ赤にし、汁まみれになって乱れていた。 このままだとまたすぐにイきそうだな。 「もうちょっとでイく!もうちょっとで…イっちゃうぅぅぅぅ!!!」 体を震わせて盛大にすっきりするゆっくり魔理沙。その体はテカテカ艶が入っていた。 「どうだ? すっきりできたか?」 「あ…はぁ。ゆっくりすっきりできたよぉ♪ でも…」 「でも…なんだ?言ってみろ」 「ゆっくり相手にすっきりしたいよぉ」 「なんだぁ、機械相手にこんなに乱れておいてまだ言うかこのビッチめ」 「おねがいじまずぅぅ! ゆっくりとゆっくりしたいのぉ!」 まったくあれだけすっきりした後だってのになんて貪欲なやつだよ。 …まぁこっちもそのための備えはある。 「仕方のないやつだ。ちょうど隣の部屋にゆっくりアリスをいっぱい飼ってあるからそこに入れてあげるよ」 「ゆっ!? あ、ありすはだめだよ! まりさしんじゃうよぉ!!」 さすがに野良ゆっくりだっただけあってゆっくりアリスが危険であることを知っているようだ。 「えー、でも他のゆっくりとゆっくりしたいんだろう? うってつけの相手じゃないか」 「い、いやだよぉぉぉぉ!! れいむ! れいむがいいよぉぉぉ!!!」 「我が侭言うなよこの雌豚饅頭。そこまで言うならこれから言うことを一時間守れればアリスは勘弁してやる」 「わ、わかったよ! なんでもいうこときくよ!!!」 「よし、それじゃあ一時間イっちゃだめだよ。イったらゆっくりアリスルームへご招待だ」 「ゅ!!? む、むりだよ! いちじかんなんて…ゆ、ゆゆー!!!」 強モードでスタートだ。 (だ、だめだよ。たえなきゃ…でも…!) まりさは体から湧きあがる衝動に耐えてきた。 しかし常に座っている椅子の激しい震動が耐えようとするまりさの心を蕩けさせていく。 さっきは意地悪されたけどすっきりさせてもらった。 やさしいお兄さんだと思ったのに…ゆっくりした結果がこれだよ。 「あ"あ"あ"あ"…だめなのにぃぃ…でもかんじちゃうよぉぉぉ!!!」 声を出してないとすぐにでもすっきりしてしまいそうだ。 「なかなか耐えるな。でもまだ5分なんだよね」 (まだごふんなんて…やっぱりむりだよぉぉ!!) まりさはゆっくりアリスの部屋に連れてかれたくない一心で耐えていた。 ゆっくりアリスとはゆっくり出来ない。主導権を奪われるとかそういう問題ではない。 ありすはすっきりした後も何度も執拗に犯してくる。 まりさは目の前で母親をありすの集団に襲われる光景を見た。だからこそここまでがんばって耐えてたのだ。 だがそれももはや限界だった。 強制的に与えられ続ける振動に性欲が刺激され続け、意思とは無関係に体がすっきりしようとしていた。 (も……だめ………) 「すっきりーーーー!!!!」 涙と涎でぐしょぐしょになりながらまりさがすっきり発言した。 顔は全然すっきりしてない。それもそうだろう。イったら終わりなのだから。 「残念だったな。じゃ、ありすルームタイムだよ」 「ぅぁ…」 激しくすっきりしたためか声も出ないまりさを隣の部屋へと持って行ってあげた。 しかし涎やら何やらでべちゃべちゃして汚いな。後で掃除しないと。 部屋へ入ると3匹のゆっくりアリスがいる。こいつらがいるとゆっくりには困らないので虐めずに飼っている。 この前もゆっくり魔理沙の家族を襲わせたんだったな。ちなみに隠れていた一匹の子まりさは放置して見逃してやった。 ま、その子ゆっくり魔理沙も大きくなり、私が今現在抱えているわけだが。 「ま、まりざーーーー!!!」 「まりさ!? どこ? まりさーーーー!!!」 私の抱えてるまりさを見るなり目の色を変えて近づいてくるゆっくりアリス達。 「ぃ…やぁ」 怯えるまりさを部屋の床へやさしく置く。 そして落ち着く暇もなくゆっくりアリスに押さえつけられるまりさ。 他二匹のゆっくりアリスも囲って三方向からまりさを犯し始めた。 「ま、まりざぁ! ハァハァ」 「いっしょにゆっくりしようよまりさー!!」 「か、か、か、かわいいよまりざー!!」 「あ"あ"あ"あ"あ"!!! はなれて! はなれてよー!!」 絶叫するまりさだったが、その口は正面のありすに塞がれてしまった。激しい舌技に思わず嬌声があがってしまう。 「むぐ…むぐぅぅ♪」 その声を聞いたありす達はさらにヒートアップする。 耳を舐め、髪を啄み、ゆっくりと焦らすように肌をなぞる。なんともいやらしい奴らだ。 さらに三匹で同時にまりさの口の中を蹂躙したりもした。 しだいに抵抗できなくなるまりさ。その様子はまさに快楽の虜になっていた。 ありす達もそろそろフィニッシュのようだ。 「まりざ! いっしょに! いっしょにイこうよ!!」 「すっきりしようね!! たえちゃだめだよ!!」 「かわいいよまりざぁ!! やさしくすっきりさせてあげるぅぅぅぅ!!!」 「んあ"あ"……! あ"あ"ーーーー!!!」 「「「「すっきりーーーーー!!!」」」」 だがありす達はまだ満足なんてしていない。 まりさの頭には小さな芽が生えてきたようだったが、気にせずありすはまりさを再び犯し始めた。 これ以上見ていてもなんだか気持ち悪いので私は部屋を後にした。 「すっきりしていってね!」と言い残して。 夜中にゆっくりアリスの部屋へ食事を運ぶとそこには、 いくつもの蔓を生やして絶命したゆっくり魔理沙と、赤ちゃんまりさだったと思われるものがいくつか転がっていた。 そして、ゆっくりアリス達はすでに死んだそれに未だに群がっていた。 やっぱゆっくりアリスは狂ってる。 私は食事を置くと逃げるように部屋を後にした。 終
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2140.html
※肉体イージー虐待、精神ハード虐待 ※虐待される一方で虐待されず幸せになるゆっくりがいます。 ※前半持ち上げ、後半叩き落します 【マタニティゆっくり】 「む~しゃむしゃ、しあわせ~♪」 一匹のゆっくりまりさが与えられた食べ物を食べてる最中にそう言った。 「こらっ、ものをおくちにいれながら喋っちゃ駄目でしょ。」 「ゆ~、ごめんなさい・・・」 傍にいる女性に行為を咎められ、まりさはそう謝った。 「しあわせ~、は ごはんがすんでからよ。わかった?」 「ゆっ!ゆっくりりかいしたよ~。」 しばらくして食事が終了した。 「む~しゃむしゃ、ごくん。しあわせ~。」 「ごちそうさま。」 女性はそういうと、床のゆっくりの食器と机の自分の食器を持って台所へと行く。 そして台所で食器を洗い片付ける。 一方、まりさはと言うと食後の余韻に浸ってだらしなく、ぐて~っその場に身を沈める。 ・・・ではなかった。 「おねえさん、まりさもてつだうよ。なんでもいって。」 ゆっくりらしからなぬ殊勝な申し出をする。 「ありがと、まりさ。でも大丈夫よ。今はまりさにしてもらうことないから 奥でゆっくりしてなさい。」 「でも・・・・・・・・・おねえさんはいま・・・・・・。わかったよ、おねえさんがそういうならゆっくりさせてもらうね。」 「ごゆっくり♪」 せっかくの申し出を断られ、なおも何か言いたそうだったまりさは 女性の厚意に甘え、それこそ本当にゆっくりらしくその場にぐて~っと身を沈めくつろぎはじめた。 食器を洗う水の音。窓から入ってくる木漏れ日と優しい風。 全身に広がる満腹感。まりさはゆっくりと幸せをかみ締めていた。 この女性と暮らすようになってからもう何ヶ月過ぎただろうか。 まりさは彼女が大好きだった。 食べ物をくれて甘えさせてくれるからじゃない。 この女性から与えられたことはたくさんあった。それこそ言葉では言い尽くせないほどに。 ─数ヶ月前─ 「この腐れ饅頭め、今日という今日は勘弁ならねぇぞ。」 「ゆううううう、はなしてね。ゆっくりしないではなしてねええええええええ。」 「いやあああああ、おねがいゆるしてえええええ。やあああああああああああああああああ」 「わからないよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」 「むきゅうううううう、だからはだげおぞうのなんでやめようっでいっだのにいいいいい。」 「ごべんなざいいいい、なんでもじまずからごろざないでえええええええええ」 数人の男達に抱えられ、畑荒らしの現行犯で捕まった十数匹のゆっくりたちは様々な悲鳴を上げていた。 そのなかには、今では女性と幸せに暮らしている、このゆっくりまりさもいた。 次々と透明な箱に入れられ、運ばれて着いた先は加工所だった。 「がごうじょいやあああああああああ、ゆっぐりでぎないいいいいいいいいいいいいいいい。」 畑荒らし仲間の内の一匹であるゆっくりありすが加工所を見るなりそう言って餡子を少し吐き出した。 かこうじょ。 その言葉を聞いてまりさは恐怖に怯えた。 今まで加工所に言ったゆっくりの話は仲間内から聞いてたがどれもゆっくりできる内容のものではなかった。 やれ拷問されて殺される、やれ発情ありすと無理やりすっきりされて殺される、髪飾りや帽子を取られ一生奴隷としてこき使われる。 虚言、憶測を含め“かこうじょ”はゆっくりの恐怖の代名詞となっていた。 そして今それを目の前にし、現実味を帯びてまりさの精神を蝕む死の恐怖に心の底から震え上がった。 いやだ。しにたくない。たすけて。だれかまりさをたすけて。まりさをたすけてゆっくりさせて。 だが、願えば願うほどに、今まで加工所から返ってきたゆっくりなどいないという現実が こんなときに限って回転の速い餡子脳の自分の頭の中に何度も突きつけられ、その奇跡の起こる可能性を消していった。 もう駄目だ。 恐怖の海でまりさは諦め、これから確実に訪れるあろう死に怯えた。 だが、死はやってこなかった。 一人の女性が自分を引き取ってくれたのだった。 崖っぷちのぎりぎりのところでまりさは拾われたのであった。 それが今まりさと一緒に住んでいる女性である。 それからは色々とあった。だがその内容を思い出せば思い出すほど、まりさは当時の自分を恥じ、そして怒りさえ覚えた。 命が助かったとわかった途端に開き直り、以前のような横暴な言動を繰り返した。 女性の叱責をうるさいとしか思えず、助けてくれたはずの女性に自分の要求のみを追及した。 今、自分がその時の女性の立場だったらそんなまりさを確実にボコボコしてただろう。 それくらい当時自分は最悪だったと思っていた。 だが、女性はそんな自分に決して諦めることも、見捨てることもなく 社会のルール、人間の世界での立ち振る舞いかたというものを教えてくれた。 時には厳しさもあった。体罰を受けることもあった。 でもその中には自分への優しさが必ず含まれていたのは今の自分はしみじみと思い出す。 そんな女性の献身のかいあってか、畑荒らしして加工所送りにされかけたことすらある、 このまりさは、今では飼いゆっくり並にゆっくり出来てる立派なゆっくりだ。 畑荒らしをしてたころの自分が恥ずかしく思い、そしてそんな教養を育んでくれた女性にまりさは感謝していた。 「まりさ~、やっぱりてつだってほしんだけど~、フィッツジェラルドとマイケルにごはんやってきてくれる~?」 「ゆっ!ゆっくりわかったよ。ゆっくりやるね。」 そう言ってまりさは即座に行動を開始する。 「いぬさん、ねこさん、ごはんだよ。ゆっくりたべてね。」 まりさが餌をやっているのは女性の家で飼われてて一緒に住んでいる犬と猫である。 「わんっ!」 「みゃ~!」 まりさは口の中で器用に開けた缶詰から取り出された中身を、餌別にフィッツジェラルドとマイケルの皿に出してやる。 二匹は出された餌に即座にかぶりつく。 「ゆっ、ぎょうぎわるいよ~。」 まりさがそう言っても聞く耳もたない。 人間と違い、言葉が通じないことを少しもどかしくなった。 はじめは「ゆっくりしていってね!」と言っても 「わん!」としか返されなかったことに発狂しかけたり(しないけど)、爪とぎ代わりにされたりもした。 しかし、今では言葉は通じなくとも同じ家で暮らす大切な家族。まりさはそう思っていた。 そしてもう一人増えるであろう家族の誕生を心待ちにしていた。 それは赤ちゃんである。 まりさの赤ちゃんではない。 それはまりさと一緒に暮らしてる女性の赤ちゃんである。彼女は今、妊娠中である。 まりさが最初にそのことに気づいたのは女性と一緒に暮らすようになって、4ヶ月してからのことだった。 横暴で傲慢だった性格も段々と矯正され、周りを見る余裕の出来た頃、女性のお腹が膨れていることに気づき、 そのことを聞いてみたところ、女性は自分が妊娠していることを教えてくれた。 自分のことにように嬉しかった。 自分を救い、色々と教えてくれた、一番大切な人に赤ちゃんが出来たこと。 まりさも赤ちゃんは大好きだ。なぜなら赤ちゃんはとてもゆっくり出来るから。 まりさもいつか赤ちゃんを作ってゆっくりしたい。そんな赤ちゃんが自分の大好きなお姉さんに出来た。 その日は一日中「ゆっゆ~♪あかちゃん~あかちゃん~、おねえさんのあかちゃん~、ゆっゆ~♪」と喜んで踊ってた。 ある日、まりさは女性と外出した。 しばらくすると、目の前からゆっくりが二匹現れた。どれもまりさが見覚えのあるゆっくりであった。 そして二匹ともまりさと同じように女性と、誰からも妊娠中とわかる女性と一緒にいた。 「ゆっ!ゆっくりしていってね。」 まりさの挨拶に 「「ゆっくりしていってね!」」 二匹のゆっくりが同時に挨拶を返す。 挨拶を返したゆっくりはそれぞれゆっくりありすとゆっくりぱちゅりー。 三匹は顔見知りだった。 なぜならその二匹のゆっくりは、まりさの野良時代からの親友であり かつてまりさと一緒に人間の畑を襲い、捕まり、加工場に送られたゆっくりだったのだから。 そしてまりさと同じように、人間に拾われ命を救われたゆっくりでもあった。 「ゆっ!ありす、ぱちゅりー、ひさしぶりだね~。ゆっくりしてた?」 「もちろんよ、まりさ。とかいはなありすはつねにゆっくりしてるものよ。」 「むきゅ~。ぱちゅりーもゆっくりしてたよ~。」 久しぶりの旧友との再会に話を弾ませる。 それは人間の方も同じで、偶然出合った女性三人も友人同士の話に夢中になっていた。 「むきゅ~、ところでまりさとありすのところのあかちゃんはまだうまれないの~?」 話の途中ぱちゅりーはそんなことを聞いてきた。 「ゆっ!ありす、にんっしんしたの?」 突然の問いかけにびっくりしたまりさは、ありすにそう問いただした。 「むきゅっ、ちがうわ、おねえさんのことよっ。」 「ゆ~、そっちのあかちゃんのことなのね。うん、まだうまれないよ。でもはやくうまれるといいね。ありすもそうおもうでしょ。」 「とうぜんね。おねえさんにあかちゃんうまれたら、ありすがとかいはのたしなみをおしえてあげるわ。」 「むきゅ~、たのしみね~」 三匹は再び他愛の無い会話をゆっくり楽しんだ後、女性達に促されてその場を後にした。 その夜、まりさはお姉さんと一緒にお風呂に入って髪を洗ってもらった。 「ゆっ、ゆ~♪ おねえさん、まりさのかみゆっくりきれいきれいにしてね。」 「はいはい。」 お湯ではすぐにふやけてしまうために、水でのシャンプーだったがまりさはさっぱりして満足だった。 やがてお風呂から上がると女性は言った。 「今日も帰り遅いみたいだから先に寝よっか。」 「そうだね。ゆっくりねむるね。」 遅い、というのは女性の妊娠の相手の男性のことである。 いつも夜遅く帰って昼ごろには出かけるために、まりさとは休日と朝以外に接する機会が無かったが その男性も女性同様優しかったために、まりさは彼のことが女性ほどではないにしろ好きだった。 やがて夜も更け、寝息と虫の声しか聞こえなくなったとき、まりさは妙なうめき声で目が覚めた。 何かと思い、声のする方を見て、まりさは声を失った。 隣で寝ていた筈の女性が額からは脂汗を流し、顔を普段の優しい面影など微塵も感じないほどに苦痛で歪ませていた。 まりさは何が起こったのか理解出来なかったが、直感で大好きな女性が危険な状態にあるのだと気づき、 全力で意識を冷静さを取り戻すことに集中させ、20秒ほどして自分を取り戻した。 まりさは女性に必死に何度も呼びかけたが、まともな返事は返ってこない。 女性の口からぼそぼそと何かが聞こえるだけである。 彼女が何を言おうとしてるのか、まりさは呼びかけをやめて、聴覚に意識を傾けた。 「・・・か・・・ちゃん・・・・・・う・・・ま・・・れ・・・る・・・あ・・・か・・・ちゃ・・・ん・・・・・・」 わずかに、かすかに聞こえるだけの女性の声。 一体何を言おうとしてるのか。考えた。一生懸命考えた。 持てる知識と知能を全動員してまりさは一つの結論に達した。 赤ちゃんが生まれる まりさは動転した。女性が赤ちゃんが生まれると知ったところでどうすればいいのかわからない。 だけど女性は今でも苦しんでいる。このままでは赤ちゃんを生む前に死んでしまうのではないだろうか。 いやだ。大好きなお姉さんが死んじゃうなんて耐えられない。助けたい。何としてでも。何かしなければ。 そうだ、自分の力で助けられないのなら誰かに助けてもらえばいいんだ。 女性を救いたいまりさは部屋を飛び出し、助けを求めた。目の前にいたのは廊下で寝ていた猫のマイケルである。まりさは必死で呼びかけた。 「ねこさん、たいへんだよ、おねえさんにあかちゃんがうまれるよ。ゆっくりしてないではやくたすけてね。」 「みゃ~。」 だがマイケルはまりさの必死の呼びかけにも普段どおりだった。それどころか寝ていたところを起こされ不機嫌そうでもあった。 「どうじでなにもじないのおおおおお、おねえざんがだいへんなんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおお」 叫んだ後で、まりさは猫には言葉が通じないことを思い出した。 「ねこさんじゃ、だめだね。おねえさんはたすけられないよ。ねこさんはなにもしなくていいよ。 おねえさんはほかのひとにたすけてもらうから。」 そう言って再び駆け出して、玄関の隅にある猫用のドアから外へ出た。そこで見つけたのは犬小屋にいる犬のフィッツジェラルドだった。 マイケルの時と同じように必死で呼びかけ、マイケルの時と同じように失敗に気付いた。 まりさはどうしようもなかった。自分には元からどうしようも出来ない。 自分以外の家族の猫や犬は言葉さえ通じず、お姉さんの危機を理解することすら出来ない。 このままではお姉さんが死んでしまうかもしれない。絶望に心が沈む。 でも、諦めるわけにはいかなった。猫にも犬にも言葉が通じない以上、今お姉さんの危機を知ってるのも、 誰かに助けを呼ぶことが出来るのは自分だけである。 まりさは門から飛び出し誰か助けてくれる人を必死で探し、必死で考えてた。 そして隣の家の玄関まで来て、大声で叫んだ。 「おねがいじまずうううう、おねえざんをだずげでぐだざいいいいいいいいいいい。」 弧を描がいた三日月が照らす真夜中に、何度も叫んだ。 留守かと思い、去ろうと思ったときに扉がガチャッと開いた。 「うるせぇぞ。今何時だと思ってるんだ!踏み潰されたいのか糞饅頭。」 扉から現れた人間の声と顔は怒りで満ちていた。 怒っている人間など、ここ最近見てなかったまりさは、恐怖に竦み、 野良時代に畑を襲ったときに、逃げ遅れた仲間が人間に踏み潰されていったのを思い出した。 自分の脳裏に仲間達と同じように潰されて死ぬ自分を思い浮かべる。 だが引くわけにはいかなかった。ここで引いたら何しにきたのかわからない。 大切な人を見殺しにしてしまったら、自分が何のために存在しているのかわからなくなってしまう。 まりさは身を潰すような恐怖の中、精一杯の限り叫んだ。 「づぶじでもいいでづううう、だがらおでえざんをだずげでぐだざいいいいいいいいいい。 あがぢゃんがうばれづんでずううううううううううううううう!!!!!」 「・・・・・・・・だったら望みどおり潰し───」 まりさは死を覚悟した。 「・・・・・・・・・なんて言った?」 「ゆ?」 「お前なんて言ったんだ?お姉さん・・・?赤ちゃん・・・?そう言ったか?」 「ゆううう!いいばじだぁ、あがじゃんうばれるんでずううう、おねえざんあがじゃん、うばれ、ぐるじぞう。」 「どこだ。あんないしろ。」 それからの展開は早かった。 助けを求めた隣の家の男性は、倒れてる女性を発見するなり即座に病院へと連絡をし、 しばらくすると駆けつけた医者とその見習い達によって病院へと運ばれていった。まりさも付き添っていった。 「か・・・家内はどうなったんだですか!?赤ん坊は・・・!!」 女性の治療の行われてる部屋の前で椅子に座ってるまりさの前に息を切らして男性がやってきた。 まりさと一緒に住んでいる女性と一緒に住んでいる人、要するに女性の夫である。 彼はまりさの前まで来て、あたり構わず周りの人に向かっては自分の疑問を叫び続けた。 「ゆっ!おいしゃさんがいまこのへやでおねえさんなおしてるよ。」 その疑問に答えたのはまりさだった。 男性はまりさの返答に答えず、黙って椅子に腰を下ろした。 どれくらい時間がたっただろうか。 扉が開き、中から医者が出てきた。 「先生!家内は・・・赤ん坊は・・・・・・」 医者は暗い顔で言った。 「母子ともに・・・大変危険な状態です。現在、最善をつくしておりますが・・・楽観は出来ません。 最悪どちらか、いえ赤ん坊を諦めざるえないことになる可能性もあります。」 「そんな・・・・・・結婚して8年・・・やっと子供が出来たのに諦めるなんて・・・・・・・・・・・・そんなこと出来るわけないだろ!」 「心中お察しします。我々も全力を尽くしますが・・・もしもの時の決断は覚悟しておいてください。」 医者はそういうと再び治療室の中へ戻っていった。 男性は頭を抱えてその場にしゃがみこんだ。 難しい言い回しはわからないまりさだったが、今の医者と男性の反応を見て主な内容はだいたいわかった。 それはまりさにとっても残酷な通知だった。 あかちゃんがうまれない。それどころかおねえさんもあぶない。もしかしたらおねえさんがしんでしまうかもしれない。 まりさの頭の中で自分にいつも優しく笑ってくれた女性の笑顔が崩れていった。 まりさは願った。女性が助かることを。赤ちゃんが無事産まれることを。 それは今まで生きてきた中で一番強い願い、加工場に捕まった時の自分の救命よりも強い願いだった。 おねがいします、おねえさんをたすけてください、 まりさのいのちをたすけてくれたおねえさんを、まりさにいろいろたいせつなことをおしえてくれたおねえさんを、 じぶんにたくさんのゆっくりをあたえてくれたおねえさんをたすけてください。 おねがいします、あかちゃんをたすけてください、 おねえさんがうまれるのをとてもとてもたのしみしてたあかちゃんをどうかどうかたすけてください。 たとえ・・・・・・ まりさがかわりにしんでもいいから・・・ おねえさんと あかちゃんを たすけてください・・・・・・・・・ どれくらい時間が過ぎただろうか。医者が治療室から出てきた。 男性はゆっくりとその顔を上げた。だが言葉が出なかった。 言葉が出せない。もし聞いて自分に残酷な現実を叩きつけられたら・・・。聞けない。何も。聞かなければいけないのに。 恐怖が男性を支配した。誰も何も言わない静寂の中、一秒が永遠とも言えるように感じた。 その静寂を破ったのは医者だった。 「・・・おめでとうございます。」 「・・・・・・・・・・・・え?」 「健康な男の子です。母子ともに異常ありません!」 しばらくの間の後、男性は大きくガッツポーズを取り、涙を流しながら叫んだ。 「危険な状態でした。私の長い医師生活の中でも上位に来るほどの。でももう心配いりませんよ。」 「ありがとうございます。ありがとうございます。先生。」 男性は泣きじゃくりながら何度も医者にお礼を言った。 その光景を見ながら、まりさも女性と赤ん坊が助かったことを知り、涙を流していた。 「それでは赤ちゃんのお顔を拝見したら、最後に奥さんにねぎらいの言葉でもかけてやってください。 申し訳ないですが夜遅いですし大変消耗してますので、今日のところは短めに済ませてくださいね。」 「はい、わかってます。・・・く~、やっとやっとうまれたんだな。俺もこれで父親かぁ~。」 男性はそう言って赤ん坊の顔をひとしきり眺めたあと、治療室から入院部屋へと移された女性に会いに言った。 赤ん坊の顔はまりさも男性に頼んで抱え上げてもらい見せてもらった。 産まれたばかりの赤ちゃんの顔はしわくちゃだが、そんなものでは覆せないほどの愛しさがまりさにもこみあげてきた。 「・・・あ・・・そういえば・・・・・・・・・」 男性と一緒に病院の廊下を歩いてると男性が突然足を止めつぶやいた。 そして視線をまりさに移しながら、こういった。 「・・・・・・そういや・・・もう生まれたんだしなぁ・・・・・・でも一応あいつの意見聞かないと・・・・・・ これでも結構長い時間過ごしただろうし・・・・・・ま、あいつに限ってないと思うが・・・・・・ っていうかどっちにしろ、規約で産まれたら一旦返却しなきゃいけないんだから同じことか。」 「?」 まりさは男性の独り言の意味がわからなかった。 女性の入院している部屋で男性は女性をねぎらった。 女性はベッドから起き上がることなく疲れきった顔で男性の言葉を聞いてた。 まりさも女性に出産の祝辞を送った。 「おねえさん、あかちゃんうまれてよかったね。とってもゆっくりできるあかちゃんだよ。」 まりさはこの次、女性が笑いながら「ありがと、まりさ」と言うと思ってた。 だが女性からの言葉はなかった。一瞥しただけで再び男性の方に向き直った。 まりさは女性が返事をしてくれなかったことに少し不満だったが 女性が酷く疲れているのが見てとれたし、そのためだと思い深く考えなった。 「こりゃ・・・聞くまでもねぇかな。」 男性がボソリとそう呟いたが、まりさには聞こえなかった。 「じゃ・・・疲れてるところわりぃし・・・先生にも言われてるんで今日は帰るな。明日は仕事を休ませてもらってくるわ」 男性が席を立った。まりさも帰るために椅子から飛び降りる。 「あっと・・・そうだ・・・・・・ま、一応念のために・・・・・・」 男性はまりさに顎で合図をし、言った。 「おい、まりさ。先に病院の玄関で待ってろ。俺もすぐ行くから。」 「ゆっくりわかったよ。へやのそとでゆっくりまってるから、ゆっくりしないではやくきてね。」 まりさはそういって部屋から出て行った。 まりさが病院の玄関で待ってるとしばらくして男性がやってきた。 「ま、わかってたことだけどね。」 そういうと男性はまりさを連れて家に帰った。 翌日、まりさと男性は家を出た。 まりさはお姉さんと赤ちゃんに会うためだと思ってが 男性に連れられて来たのは別の場所だった。 「ゆ?おにいさん、ここはびょういんじゃないよ。ここじゃおねえさんとあかちゃんにあえないよ。」 疑問を口にするまりさを無視し、男性は入り口で受付を済ませ、建物の中に入っていった。 病院じゃないと気付いたまりさであったが、数ヶ月前に来て以来一度も来たことなかったので ここが初めて女性と会った場所だとは気付かなかった。 加工場とは。 「それでは。確かに返却受け付けました。」 「お願いします。」 「もし今後この子を正式に飼いゆっくりにしたい場合は、一週間以内に引き取りに来てくださいね。 一週間以内なら優先的に、かつ割引料金で引き取れますんで。」 「どうも。でもそれはないと思いますよ。これからは育児で忙しくなると思いますからそんな余裕ないですし、 家内もあまり未練はないらしくて、昨日の夜あっさりと了承してくれましたからね。」 「ははは、そういう人に限って後から寂しくなったと言ってくるケース多いんですよ~。 それで他の人と競っちゃうことになって高くついちゃったとか。」 「ははははははは。うちのに限ってそれはないですよ。もう既に手のかかるかわいいのが二匹もいますし。」 そのようなやりとりの後、まりさは加工場の職員に引き渡された。 「ゆ?おにいさん。これからおねえさんとあかちゃん、あいにいくんでしょ。まりさゆっくりつれてってね。」 「いままでありがとな。お前さんとの経験を生かして立派な子供に育てるよ。お前も頑張れよ。」 職員の腕に抱えられたまりさのそのような呼び掛けに対し、男性は前後の繋がらない返事をし、帰ってしまった。 「おにいさん、まってよ。まりさもつれってね。おねえさんとあかちゃんのところつれてってね。 おじさん、まりさをはなしてね。まりさはおにいさんといっしょにおねえさんとあかちゃんのところにいくんだから。」 まりさは姿の見えなくなった男性を呼び続け、次に自分を抱えて離さない中年の男性にもそう言う。 だが既にこの場にいない男性はもちろんまりさの呼びかけに答えることなど出来ないし、 まりさを抱えてる中年男性もまりさの言葉を無視し、まりさを抱えたまま、歩き始めた。 「どうじではなじでぐれないのおおおおおおお。ばりざもおねえざんとあがぢゃんのどころにいぐのにいいいい。」 しばらくしてまりさは中年男性の手の中でとうとう泣き出してしまった。 自分は一刻も早くお姉さんのところに行って、お姉さんと赤ちゃんに会いたいのになんで邪魔されなければいけないんだろうか。 答えの出ないまま、まりさは泣き続けた。 まりさを抱えた中年男性はある扉の前で立ち止まり、その扉をノックした。中から扉が開けられ、まりさは中にいた別の青年職員に手渡される。 まりさを受け取った青年はまりさを運んできた中年男性がドアを締めたのを確認した後、 扉から1メートルほどのところにある、人の腰ほどの高さの柵の向こう側にまりさを軽く放り投げた。 そして扉の傍にあった椅子に座り、読みかけていた本に手を伸ばし読み始めた。 「ゆっ!おにいさん。まりさはおねえさんとあかちゃんにあいにいくんだからはやくここからだしてね。」 体の自由を取り戻したことで幾分落ち着きを取り戻したまりさは青年にそう言った。 だが青年は答えず黙々と本を読み続ける。次第にまりさは言っても無駄だと悟り、黙った。 何もすることもなくなったまりさは、周囲を見回し始めた。 それなりに広い四角い部屋で扉はまりさが入って来たところ一つだけ。 壁は一箇所だけ長方形の枠にガラスらしきものがはめ込んであるが外は見えず、その壁以外何も無かった。 扉から1メートルほどのところにある柵で部屋は分断されてて、自分がいるところと青年が座って本を読んでる部分の面積比はだいたい4:1。 そして部屋の中には自分以外のゆっくりの姿が見えた。数にしてだいたい3匹ほど。みんな一様に沈んだ顔で泣いている。 おそらく自分と同じように飼い主から引き離されたゆっくりだとまりさは判断した。 その中で一匹だけまりさは見知ったゆっくりを発見した。親友のゆっくりぱちゅりーである。 「ぱちゅりー!?」 「・・・・・・まりざああ?・・・むきゅううううううん、どごなのごごはあああ、おねえざんはあああ、あがぢゃんはどごおおお?」 いきなり連れてこられた殺風景な部屋の中、親友の顔を発見したぱちゅりーはまりさに泣きついてきた。 ぱちゅりーの疑問に答えられずはずもないまりさは自分もつられて泣きたいのを堪えながら、泣き続ける親友の頭を抱き続けた。 それから一週間の間に連れてこられるゆっくりは増え、まりさとぱちゅりーの親友のゆっくりありすも連れてこられた。 まりさとぱちゅりーを前に気丈に振舞ってたありすだが、その目には涙が浮かび、絶えず一緒に暮らしてた女性とその赤ん坊のことを気にかけていた。 それから何日たっただろうか。連れてこられるゆっくりはいなくなり、次第にそれとは逆に部屋から運び出されるゆっくりが現れた。 「まりさああああああ、ぱちゅりいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい」 「まりざああああああああああああ、だずげでええええええええええええええええええええええええええええ」 まりさの親友のありすとぱちゅりーもある日部屋から運び出された。 何もわからない状況のまま、互いの支えであった親友の連れて行かれるのを、まりさは何も出来ず只泣いて見ていることしか出来なかった。 それがまりさが親友二匹の姿をその目で見た最後の日となった。 そしてついにまりさも部屋から運び出される日が来た。 まりさは自分を運び出しに来た青年職員を睨み付けた。 いつも泣いてた他のゆっくり達を、泣いてたまりさの親友二匹を、 へらへらと笑いながら部屋から運び出して言った青年をまりさは嫌っていた。 自分もへらへら笑いながら連れ出されるんだろうか。そんな思いを抱きながらまりさは青年を睨み付けた。 だがその日の青年の様子はいつもと違っていた。いつものへらへらとした笑いではなくとても沈んだ悲しそうな表情だった。 その表情に気圧され、まりさは睨みつけるのをやめた。 「・・・・・・一ヶ月もあったのに・・・なんでお前だけ・・・・・・・・・・・・」 青年はそう呟きながらまりさを運び出して言った。 重い足取りの青年に抱えられ、部屋を出されたまりさは透明な箱に入れられ、別の部屋も連れてこられた。 部屋の前方には机が一つ置かれ、脇に少数の職員がいた。 机から部屋の後ろまでは処狭しとたくさんの人が椅子を敷き詰め座っていた。 まりさは机の上に置かれた。部屋に集まった人の期待に満ちた視線がまりさに一斉に集まった。 「それでは・・・発表します。・・・・・・今回の当選者番号は・・・42番!42番!!! 42番の方、おめでとうございます!!!!!!」 その瞬間一人の歓声と大勢の落胆の声が漏れた。 まりさは透明な箱に入れられたまま、歓声を上げた男に引き取られた。 そして彼に抱えられ、加工場の外に出ることになった。 久しぶりに見る外の世界、太陽の日差しが眩しかったが、久しぶりの外に出られたことに感動して悪い気はしなかった。 これでおねえさんとあかちゃんのところにいける。 このおにいさんにかいほうしてもらったら、ゆっくりせずにあいにいこう。 まりさの頭は外に出れた希望で満ち溢れていた。 まりさが加工場から男性に連れられて一時間ほどして人里の中にある一軒屋にたどり着いた。 男の家らしく、懐から鍵を取り出して扉を開錠して開けると中に入り、再び鍵を閉めた。 そのまま廊下を渡ってある部屋のドアを開けて中に入ると、窓にも鍵がかかってることを確かめた後、まりさは箱から出された。 「ゆっ!おにいさん、あそこからだしてくれてありがとね。じゃ、まりさはおねえさんとあかちゃんにあいにいくから、ゆっくりとそとにだしてね。」 まりさは外に出すように催促したが男は答えなかった。 「ゆゆ~?おにいさん?」 返事を返さない男の顔をまりさは訝しげに覗き込む。 男は床の上にいるまりさを見つめながら、笑いをかみ殺したような顔をしている。 「おにいさん!きこえてるの?まりさをはやくここからだしておねえさんと───」 「無理。残念。キミは今から虐待。いっぱい苦しめてあげるね♪」 男はそう言ってまりさとのコミュニケーションを放棄すると、部屋の中にある机の引き出しから糸刺し(裁縫針を刺して保管する小さなクッション状のもの)を取り出すとそこから裁縫針を一本抜き出し、まりさを押さえつけて側面部をザクザクと針を刺し始めた。 「・・・・・・ぐびっ!?・・・ぎゅっ!・・・ゆぎゃああああああああああああああああああああ!!!!!!!」 突然の出来事に思考が追いつかなかったまりさは遅れて絶叫をあげる。 「おひょおおおおおおおおお~~~~~、一気にいくよおおおおおおお!ザクザクザクザクザクザクザク~~~~~~!」 まりさの絶叫を聞いてエキサイトした男はヒートアップして更に勢いを増しながらまりさの体に針を刺し続けた。 裁縫針程度の穴では餡子も中々漏れず、例え赤ゆっくりであろうと中枢部を激しく傷つけない限りは死に至ることはない。 だが鋭利な針に刺されることはそのような生命活動への影響の少なさとは裏腹に、まりさに耐え難い激痛をもたらしていた。 「ぐぎいいっ・・・!やべっっ・・・!!!!いだっ・・・!あっ・・・!!!ゆぐぅっ・・・!!!!!えぐっ!・・・あぎっ!!!」 次第にまりさは絶え間ない激痛のために呂律も回らなくなっていってしまった。 「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・最初はこんなもんか・・・。挨拶代わりとしてはこれくらいでいいか・・・・・・。」 一分ほど針を刺され続けたころ、男性は息を切らしながら、そういってまりさを刺すのをやめた。 まりさの体は300を超える針穴でいっぱいになっていた。 「はぁ・・・・・・・・・はぁ・・・はぁ・・・おーい、聞こえてるか~・・・まりさちゃ~ん・・・おーい。はぁ・・・はぁ・・・・・・」 床でピクピク震えてるまりさに対し、男は尋ねた。だが返事が中々来ないので男は少し待った。 やがて男の問いにしばらくしてまりさがわずかに反応した。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・じで・・・」 「ん・・・?」 「・・・・・・・・・どうじで・・・ごんなご・・・・・・ず・・・の・・・・・?まりざ・・・なに・・・ぼ・・・わづいごど・・・じでな・・・のに・・・・・・・・・。」 精神力の限りを振り絞り、まりさはか細い声で今一番知りたい疑問を男に問いかけた。 自分は何も悪いことはしていないはず。だがもし自分が何か罰を受けるべき悪いことを知らないうちにしたのなら謝り矯正しよう。 人間と暮らしてきたゆっくりにとっては当然の保身の術であった。 その問いかけ対して男が答えた。 「ああ、まりさは何もしてないさ。何も悪くない。こんなことされる理由なんて何一つ無いよ。 でもこれからも同じことするからね。いっぱいいっぱい針でザクザク刺して上げるからね。 針で刺すだけじゃなくもっともっと痛くて痛くてたまらないことしてあげるからね。 まりさは何も悪くないけど、いっぱいいっぱい苦しめてゆっくり出来なくしてあげるよ。」 「ゆ・・・。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ゆっ!?ゆううううううううううう!?どぼじでえええええええええええええええ!!!!!!」 男の言葉の理不尽さにまりさは泣き叫んだ。 「さ~て、それじゃ第2ラウンドと行こうか、まりさちゃ~ん。今度はどんな痛い思いしたいかな~?」 「ゆぐう・・・・・・いたいのやだぁ・・・・・・・・・おうちかえるぅぅぅ・・・・・・おねえさんのいえにがえるぅぅぅ・・・・・・・・・・・・・・・」 男の問いに先ほどの激痛を思い出したまりさは震えながら男に哀願する。 「だ~めだってば。まりさはこれからもっともっと痛くて苦しい思いしなくちゃならないんだから、 “おねえさん”のお家に帰ることも出来ないよ。」 「どおじでえええええええええええええええええ!!まりざわるぐないのにいいいいいいい。」 「悪かろうと悪くなかろうと痛い思いする。それがまりさちゃんの運命なんだよ。わかった~?」 男はそういって再びまりさを押さえつけた後、裁縫針をまりさに見えるように構えた。 先端の鋭利さがまりさに先ほどの激痛を思い出させた。 「だでがだずげでええええええええええええええええ!!!!!」 「それじゃこんどは顔面グッサグッサいこうか。痛いよ~。とっても痛いよ~。さっきよりもっと痛いからね~。」 「やべでえええええええええええええええええええ!!!!!」 まりさの脳裏に先ほどの耐え難い激痛が甦る。 そして男はまりさの顔面を再びザクザクと針で刺し始めた。 「ゆびぎゃああああああああああああああああ!!!!!!!!! まりさの絶叫が再び響きわたる。 針で刺される激痛でまとまらない思考の中で、まりさは必死に考えていた。 なんで自分がこんな目にあわなければならないのか。なんでお姉さんはこんな目にあってる自分をほったらかしにしてるか。 そして答えのでないまま、耐え難い激痛にまりさの思考は埋め尽くされていった。 数分して、男は手を止めた。 今度はしっかりとペース配分に気をつけたので、先ほどのようにすぐに息が上がることなく、数分間まりさの顔面に針を刺し続けることが出来た。 穴だらけの顔面でまりさは両目から絶え間なく涙を流し、「ゆびっ!・・・ゆぼっ!・・・ゆべべっ!!」と妙な声を発しながら痙攣していた。 痛みの許容量が限界を遥かに超えてしまっために、処理に脳が追いついていないのだ。 人間であるならとっくに気絶してもおかしくない激痛でも、ゆっくりの体と精神はそのような機能など持ち合わせていない。 いや、その言い方は正しくない。正確にはそれは既にまりさにとっては失われた機能だということだ。 以前のゆっくりは過度の苦痛に対しては気絶したり、場合によっては精神崩壊、発狂したりしていた。 愛する子供達を全て殺された親ゆっくりの精神崩壊や、姉妹が惨たらしく殺されてその恐怖で気絶する赤ゆっくりがその顕著な例である。 しかし近年のゆっくりの中にどのような苦痛に対しても、気絶や精神崩壊を起こさない個体があらわれたのである。 ゆっくりの研究者は、危険な外敵の前で気絶や精神崩壊を起こすことは生存の可能性を完全に潰してしまう命取りであるために 手足も鋭い牙ももたないゆっくりが自然で生き残るためのささやかな進化ではないかと唱えた。 痙攣して震えてる時点で生存確率にどの程度の差が出るのか聞きたいものだが。 当のまりさもそのようなタイプのゆっくりであり、苦痛に大して気絶も精神崩壊も発狂もしない。 この場合、「出来ない」と言った方がいいのかもしれないが。 故に痛みに対して精神と肉体を切り離すことが出来ず、無尽蔵に際限なく苦痛を溜め込んでしまう。 どんな苦痛だろうと気絶することが出来ないまりさは許容量を遥かに超えてしまった痛みに対して、 餡子で出来た脳が許容量を超えた分の痛みをゆっくりと処理していくのを、意識を保ったまま待ち続けることしか出来なかった。 絶え間なく耐え難い激痛がまりさの精神を蝕ばむ。まりさは一刻も早く苦痛から逃れられるよう願い続けた。 その苦痛は数時間続き、まりさは奇妙な声をあげながら痙攣して体を動かすことが出来なかった。 男はまりさを箱の中に入れ部屋を出て行った。こうして初日の虐待が終わった。 【前編】 終わり 【中編へ続きます】 中編予告 すっきり×赤ちゃん×同族殺し ゆっくりいじめ系1879 マタニティゆっくり 中編 1につづく このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3609.html
出勤前にモーニングコーヒーと洒落込むべく、今日は早めに家を出た。 会社最寄り駅近くの喫茶店は出勤者向けに早くからやっている。 そこでトーストにスクランブルエッグで軽く朝食を取って、それからブラックをゆっくり味わおう。 しょせんは大したものではないが、こういうのは気分が大事なのだ。その程度の事で優雅さを味わえるのだから、素直に味わった方が利口だ。 時間は十分にある。 今日は随分と暖かく晴れていて良い気分である。俺と同じように駅に向かう出勤者も何となしに起源良さそうに見える。 橋に差し掛かると対岸の道路に何やら人だかりが出来ているが見えた。 あれは何だろうか。電柱の周りで、十四五人ばかり各々その先の方を見上げている。 よく見ると電柱のてっぺんには一匹のゆっくりがおり、「わからないよー!わからないよー!」と泣き叫んでいた。 本当に分からない。 猫が登って降りられなくなるというのは良く聞く話だが、何で饅頭生命体があんな所に登る事が出来るのだ? しかし……俺は考え直した。そもそもゆっくりなのだ。饅頭が動き、言語を解するのだ。 それを思えば電柱に登るなど大した事でないのかもしれない。 マンションだろうと這い上がってくる奴らだ。 それにしても、馬鹿は高い所が好きと言うが、わざわざ表現してみせる事もないだろう。 橋を渡り、人だかりに近付くと、その輪の中、電柱の根本にはもう一匹のゆっくりが泣き叫んでいた。 「ちぇえええん!ちぇえええええんッ!」 何やら尻尾のようなものを沢山生やらかしたゆっくりが、電柱を見上げてひたすら叫んでいる。 その顔は傷だらけで、帽子は薄汚れ所々すり切れた後が見える。そして近くにこいつのものと思しき尻尾が二本ほど転がっていた。 俺は不思議に思い足を止めた。そうして人だかりに加わってしまった。 なぜこのゆっくりは傷だらけなのだろう。二匹はどういう間柄なのだろう。 一方の疑問は直ぐに解消された。 真下で泣いていたゆっくりは突然泣き止むと、その場を後ろに下がり、勢いを付けて電柱に突進したのだ。 助走を付けてジャンプし、ゆっくりらしからぬ見事な跳躍を見せ、そのまま電柱に激突した。 傷だらけになるわけだ。 「らんしゃまあああ!」 電柱の上から「ちぇえん」と呼ばれたゆっくりの泣き声が聞こえる。 「らんしゃま」と呼ばれたゆっくりは痛みにぐるぐる回っていたが、そのうち止まってまた泣き出した。 俺は素早く見物人の顔を見回した。 饅頭とはいえ、他者の不幸を見て機嫌良くなる奴というのは気持ちの良いものではない。 まあ俺もよくゆっくりを不幸にしているのだが、それとて仕方なしに投げ込んでいるのだ。 だが皆の顔は真剣そのものだった。老若男女、一様に真面目な顔をしている。 沿線の私立の制服を着た小学生達など、「頑張れ!」と声を掛けている。 世の中捨てたものではないらしい。 まあここの住民はよくゆっくりを不幸にしているのだが。 「らんしゃま」は再び電柱に距離を取った。 小学生のうち一人が電柱に向かって飛び、一歩二歩駆け上がる動作をしてみせる。登り方を教えているらしい。 ゆっくりは再度助走を付けた。 「ちぇええええん!」 今度は角度も良く飛び付く事が出来た。その勢いで電柱を駆け上がる。 そして二メートル程登ったところで勢いが尽きてそのままずり落ちてきた。 頭を地面に打ってひたすら回り続けるゆっくり。今度はさっきより回る時間が長い。 その傍らには新たにもげた尻尾が落ちている。 上の方からは相変わらず「わからないよー!」と泣き声が聞こえてきた。 三回目。 今度は電柱との距離を倍にとって勢いを稼ぐつもりのようだ。 相当早いスピードで電柱に飛び付く。角度も上々。 「らんしゃま」は、これならてっぺんまで上れるだろうという勢いで、電柱に刺さっている足場の鉄棒に激突した。 尻尾が何本かバラバラ降ってくる。 そのうちの一本が、登り方を教えていたのとは別の小学生の頭に落ちてきた。 その子供は帽子の上にのっかった尻尾を手に取りまじまじと見つめ、「おいなりさんだ。」と言って食ってしまった。 「おいしい。」 そんなもの食って大丈夫なのか。 それはともかくとして、苦痛から立ち直った「らんしゃま」はまじまじと電柱を見やっている。 障害物の位置を確認しているらしい。 段々上達しているし、こいつはそれなりに学習能力があるようだ。 見物人は一人として立ち去る者もなく成り行きを見守っている。 会社とか学校とか大丈夫なのか。 四回目。 既に満身創痍な「らんしゃま」だったが、尻尾が減ったせいか俊敏になった気がする。 今度は更に早いスピードで飛び上がって、螺旋を描くようにして電柱を駆け上がっていった。 鉄棒も見事にかわしてゆく。 三メートル、四メートル、どんどん登ってゆく。 そして電線や変圧器などの構造物も難なくかわした。 見事としか言い様がない。 だが回避行動よって勢いが無くなってきた。 九割がた登ったところでほとんど止まってしまった。 「らんしゃまあああッ!」 見物人は、俺も含め固唾をのんで見守っている。ここから落ちたら助からないのではないか? 「もう一息だ」と、全員の心が一つになったような気がした。 「ちぇええええんッ!」 「らんしゃま」は叫ぶと最後の力を振り絞って蹴り出した。 そうして残りの一割を一気に飛び越え、とうとう頂上に辿り着いた。 「らんしゃまあ!」 「ちぇえん!」 周りからは拍手喝采が沸き起こっている。 増えて二十人になった見物人達は、良くやった、頑張った、と皆満足そうだ。 だが全員すぐに不安顔になった。見るとゆっくりは不安定にゆらゆらゆれている。 「わからないよ!わからないよー!」 「わからないよー!」 あー。 あいつも降りるときの事考えてなかったんだな。 電柱の頂点に二匹は狭すぎたようだ。 ゆっくりはしばらくゆれていたが、そのうち耐えきれなくなって、ふっ、と落下してきた。 「わ゛がら゛な゛い゛よ゛!」 「ヴュッ」という生々しい断末魔と共にゆっくりは揃って地上に還ってきた。 「あーあ」と、全員の心が一つになったような気がした。 「ちぇえん」は「らんしゃま」の下敷きになってしまった。 「らんしゃま」は下敷きからころんと転がって、仰向けで「ゆっ……!ゆっ……!」と呻いている。 「ちぇえん」は俯せになって身じろぎもしない。 しばらくすると「らんしゃま」は横目で「ちぇえん」を見つめ、何か語りかけだした。 しかし素人目に分かるが即死である。どうも惨い結果になってしまったようだ。 「行こっか。」 ばつの悪い顔で即死と瀕死の二匹を眺めていた見物人は、小学生を先頭に早々と立ち去っていった。 ここの住民はドライだなあ。 現場には俺と二匹だけが取り残されてしまった。 歩行者が何人かこちらを見たりもするが、特に関心も示さず通り過ぎてゆく。 「ちぇ……えええん……」 「らんしゃま」はひたすら語りかけているが、当然のように反応は無い。 なんだか見るに忍びない姿だ。仕方ない。 死体をひっくり返せば一目瞭然なのだろうが、さすがにそれは酷な気がする。 俺は傍にしゃがみ込んで、既に分かっている事だが、改めて死体を確認してから瀕死のゆっくりに向かって首を振って見せた。 「ちぇえん……」 どうやら理解出来たらしい。手間が省けて助かる。 こいつも尻尾を全部失った上に、頬や額が裂けていて助かる見込みは無いだろう。 俺は立ち上がって右足を上げた。武士の情けとか仏心とか、そんなところだ。 俺を眺めていた「らんしゃま」は怯える事もなく、むしろ急かすように目を閉じた。 間抜けな割に妙に理解の良い奴だ。 止めを刺した後、あの世で仲良くやってくれと思いつつ二匹を川に投げ込んだ。 潰れた死体はすぐさま水に溶けてゆく。 そして俺は駅とは反対の、家に向かって歩き出した。 革靴が随分と汚れてしまったのだ。 こんな格好では会社に行けない。家に帰って靴を磨き直さなければならない。 モーニングコーヒーなどしている時間はもう無いだろう。 俺は陰鬱な気分で家に向かった。 By GTO
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2139.html
人里はなれた森の奥深くに、ゆっくりの群れがあったそうな。 その群れのドスまりさは、とてもやさしく、 狩りが得意で みんなに好かれてたそうな。 人間と衝突することもなく、群れで幾年も過ごし、 ドスはこの上なく"しあわせーっ"だった。 ある年、群れが食料探しをしていたとき 一匹のれいむが森の外れまで出て行ってしまった。 ゆゆっ、もりが きゅうになくなっちゃったよ! むこうに なにかあるよ!ゆっくりみにいくよ! みんな、ゆっくりただいまーー。 どす!もりのむこうで ゆっくりぷれいすがあったよ! れいむが みつけたんだよ! "にんげん"っていきものが たくさんいたよ! でも、にんげんさんたちは やさしくしてくれたんだよ! えっ、ドスどういうこと?ゆっくり せつめいしてね。 もう にどと いっちゃだめって なんで? もういいよ!ぷんぷんっ! "あんなに おやさいが たくさんおちてるのに" ゆゆ、ドスがいないね。 きっと どこかでゆっくりしてるんだね! さあ、みんなで おやさいを とりにいくよ! ドスをびっくり させようね! おこってたドスも きっとゆるしてくれるよ。 だって、ドスはやさしいからね! ゆ?ドス? なんで、ドスがもりのそとにいるの? あ、にんげんさん。こんにちは。 そうか、そうなんだね!ドスも おやさいたべにきたんだね! さあ、れいむたちも みんなでおやさいたべるよ! むーちゃ、むーちゃ、むーちゃ!しあわせーーー! あれ?ドス、どうしたの。 なんで、そんなにゆっくりしてないの? ゆゆっ、にんげんさん、どうしたの? ──────── ──── ──泥棒! ─不可侵条約なんて騙しやがって! ─ だから信用出来ねえって言ったんだ! ── 条約通りに焼饅頭になってもらうぞ!── そっちだ!早く、ふん縛れ! ── ───── ─────── ゆゆっ?にんげんさんたちは なにをいってるの? そんなにおこったら ゆっくりできないよ。 ぐにゃりと けしきがゆがんで きがついたら れいむはおそらをとんでたよ。 ──そして…ドスはさいごに 「もっと、ゆっくりしたかった!」といった… ゆぅ~、みんなどこいったの~ れいむひとりだけに なっちゃったよ~ にんげんたちが わるいんだ おやさいを ひとりじめして ドスやむれのみんなまで……! それでもみんな…やさしいドスだから… みんな ゆるしちゃうんだね………………… 「でも、れいむは ぜったいにゆるさないよ…!」 「やっぱり にんげんは ちっともゆっくりできないやつらだよ!! そんなやつらなんか みんな れいむがやっつけてやるんだから!」 ──たった一匹だけ生き残り 憤怒の炎を背に 村に向かうれいむの後ろを その闇の向こうから 『鬼伊産』が見ていた── グチャッ、ぶぴゅっ!! END あとがき なんかごめんなさい 前スレ 304 でゆっくりYieldとかゆっくりサクリ……とか 言ってるのを見たら、急に何か受信してしまって 我慢出来なかった。 でも、書いてるうちに始めの構想からどんどん 離れてきた。ゆっくりした結果がこれだよ!! もうサクリ……とか、跡形も残って無いよ!! ゆっくりの一人称って読みにくい。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1349.html
※前に書いた『衣玖さんとゆっくり』の続き。と言っても前作を見るほどのものでもないです。 ※東方キャラがゆっくりを虐めてます。例えば衣玖さんとか天子とか。 ※虐殺メイン…かな。 永江衣玖は急いでいた。 数刻前、龍の言葉から衣玖は天界、いや幻想郷全体に危機が迫っていることを知った。 これはゆっくりてんこを虐めて楽しんでる場合ではない。 「総領娘様は無事でしょうか」 口には出したけど大丈夫だろう。 自分勝手で世間知らずでもその強さは本物だ。大抵の危機は自力で解決もできる。 しかし龍が伝えるほどの危機が迫っているのは確かだった。 「危機とはいったいどんな物なのでしょうか」 とにかく天界に行ってみないことには判断がつかない。 そんな訳で衣玖は急いでいた。 天界に着くとそこにはゆっくりがいた。 右を向いても左を向いてもゆっくりの群れ。 しかもそのゆっくりは全て希少種であるはずのゆっくりてんこだった。 つい癖で虐めたくなる衣玖だったが、今は別の使命がある。 てんこが大量発生した原因を探らねば。 自由に跳ねまわるてんこを空中から眺めながら飛んでいると 呆然と宙に浮いている比那名居一族のお嬢様である比那名居 天子を発見した。 「総領娘様! 一体何が起きているのです?」 衣玖が話しかけると天子はあからさまに不機嫌そうな顔をしながら答える。 「私も知りたいぐらいだわ。 何なのこいつら」 「ゆっくりですね。それも総領娘様タイプの」 「それは分かる。でもなんで増えるのか分からないのよ」 「増える…? 増える瞬間を見たのですか?」 てんこの生殖方法というか子てんこを産み出す方法は衣玖も知っていた。 てんこは虐められるのが好きなゆっくりで傷めつけられると快感を覚える性質を持っている。 虐めてくれそうな相手を見つけると「ゆっくりいじめてね!」と迫り、無視すれば相手がいらつく行為をして気を引こうとする。 そして虐め抜かれて命を失ったてんこは茎を生やし、赤ちゃんてんこを実らすのだ。 「ちなみにどんな時に増えましたか?」 衣玖は原因が身近に居そうな空気を感じながらも天子に訪ねた。 「信じられないかもしれないけど…」 天子の話をまとめるとこういうことだ。 数十匹のてんこが天界の花畑を食い荒かしていたのを見た天子が得意の地震攻撃で追い払おうとしたところ、 地震の揺れで発情したてんこが子作りを始めたとのこと。 天子は突然の性行為にあっけにとられ、その間にてんこは増えてしまったという訳だ。 「それにしては多すぎません?」 天界の花畑には至る所にてんこがいる。見える範囲だけで数えても千は下るまい。 数十匹のてんこが繁殖したにしても多すぎる。 「まだ話は終わりじゃないの」 天子はその増えたてんこ達を地符「不譲土壌の剣」により潰そうとしたらしい。 地形を隆起させて周囲を攻撃するスペルカードでれいむ種やまりさ種などの通常のゆっくりが受ければ皮がちぎれて死ぬだろう。 だがてんこは打撃に強かったらしく数匹が隆起した岩に体を貫かれて死んだぐらいで他多数はほぼノーダメージだったらしい。 そして痛がりも苦しみもせず、 「きもぢぃぃぃぃ!!もっどいじめでぇぇぇ」 と叫んでさらなる攻めをおねだりしてくる。 イラついた天子は何度かスペルを発動しててんこを殺したのだが、その頭には大量の茎と赤ちゃんてんこが実っていた。 「それでこの惨状ですか」 「それだけじゃないのよ。どこから現れたのか「ゆっくりいじめてね!」なんて言いながらこいつらが集まってきたの」 「はぁ…結局この異変の原因は総領娘様でしたか」 「む…何よ結局って! ただの龍宮の使いのくせに生意気ね」 「とにかくここで見ていても仕方ありませんね。一気に殲滅しましょう」 「そうね。あんな変な生き物にこれ以上天界の土は踏ませるわけにはいかないね」 天子と衣玖はその体に霊力を漲らせる。 「さぁ、行くわよ衣玖。あんな下等生物など根絶やしにするわよ!」 一方その頃―― 大量発生し、天界から溢れたてんこは各地で暴れていた。 ある森の中では、ゆっくり魔理沙の家にてんこが侵入していた。 まりさの家には体の大きい母まりさと子まりさ数匹が住んでいて、 ちょうど食事を終えてゆっくりしていたところだった。 「ここはまりさの家だよ! ゆっくりでていってね!!」 「これからゆっくりおひるねたいむなんだよ! くうきよんでね!!」 「しょうだよ! ゆっくちできにゃいならでていっちぇね!!」 しかしてんこは追い出そうとするまりさの敵意を別のものとして受け取っていた。 「いじめてくれるの!? ゆっくりいじめてね!!」 「ゆ"っ!? な、なんなのぜ!?」 戸惑う母まりさにてんこは擦り寄っていく。 「ゆっくりいじめてね!!」 「ならゆっくりいじめるよ!!」 相手が虐めてと言うなら虐めてやろう。 何せ自分たちのおうちに侵入してきた敵なのだから躊躇する理由もない。 母まりさはその大きな体をてんこにぶちかます。 母体のゆっくりの体当たりとなると子ゆっくり程度なら一撃で潰れて死ぬ。 成体ゆっくりでも数回受ければ餡子を吐き出し息絶えるだろう。 しかしてんこは異様に打たれ強いことを母まりさは知らなかった。 「いだいぃぃぃぃ!! もっどじでぇぇー!!」 「ゆゆっ!?」 「おかーしゃんのたいあたりがきかないよ!?」 「きっとうんがよかっただけだよ!」 「おかーさんやっちゃえ!!」 「そうだよね! こんどこそゆっくりしね!!」 再び母まりさは体当たりで攻撃を仕掛ける。今度は吹き飛んだてんこを壁に押し付けてプレスする。 「ゅ"…ゅ"ぅぅ…」 母まりさの巨体と木の壁に挟まれて圧迫されて苦しそうな声をあげるてんこ。 (勝った…!) だが次の瞬間、母まりさはてんこのタフさを知る。 「ゅ"…ゅ"…ぎもぢ…い"ぃ"ぃ"! もっど…じでぇ…!」 「ゆ"っ!?」 母まりさの押し潰しは効いてないどころか先ほどよりもずっと気持ちよさそうにしていたのである。 バッとてんこから離れて思わぬ強敵に警戒する母まりさ。 その様子を見たてんこはどうしたのだろうと不思議に思う。 「どうしたの? もっといじめてぇ!!」 「ゅぐっ! おかーしゃんこわいよ!!」 「なんなのこいつ! ゆっくりできないよ!!」 子ゆっくり達はお母さんの体当たりで死なないゆっくりに恐れを抱き始めた。 母まりさもまた、最大の必殺技である押し潰しの効かない相手に手を出せずにいた。 「ゆっくりいじめてね! いじめてね!!」 期待に満ちた目で母まりさを見つめながらぴょんぴょん跳ねる。 しかし虐めてくれないことが分かるとてんこは次の行動に移った。 「ゆ! それはまりさたちのしょくりょうだよ!! かってにたべないでね!!」 「むーしゃ、むーしゃ、ひそうてん~♪」 次々とまりさ家族の集めた食糧を食べていくてんこだが、これはお腹が減ったからではない。 まりさを怒らせて虐めてもらうために食べていた。 「もうゆるさないよ!! ゆっくりしないですぐしね!!!」 自分が頑張って集めた食糧を目の前で奪われるのをこれ以上許せるわけがない。 母まりさはてんこへの攻撃を再開する。 「しね! しね! しねしねしねぇぇ!!!」 てんこを吹き飛ばした母まりさはてんこに圧し掛かると、ズンズンと跳ねててんこを潰そうとする。 しかしてんこは潰される痛み、苦しみに身悶えしていた。もちろん快感で。 「ああああああっ! もっといじめてぇぇぇぇ!!!」 「ゆゆゆゆゆ!! なんで!? なんでしなないのぉぉぉぉ!!!」 気味が悪くなって母まりさは再び離れた。 「どうしたの? もっといじめてくれないの??」 「ゆ! こっちにこないでね!!」 ジリジリとにじり寄るてんこに後ずさりして離れる母まりさ。 母まりさの背中には子まりさ達が隠れていた。 「なんでにげるの? もっといじめてね!!」 「こないでぇ!! しょくりょうはぜんぶあげるからぁぁ!!」 「ゆぶぇぇぇ!!」 「おかーしゃんぐるじぃぃぃ!!!」 母まりさは近寄るてんこから離れようとさらに下がる。 しかし背中に隠れていた子供たちは母まりさによって潰されようとしていた。 「ハァハァ、ゆっくりいじめてぇぇぇ…!!」 「いやぁぁあぁぁぁぁぁぁ!!! ゆっぐりざぜでぇぇぇぇ!!!」 森に母まりさの悲鳴と子まりさの潰れた音が響いた。 そしてまた一方ではれみりゃがてんこを食していた。 鋭い牙はてんこの弾力溢れる肌を突き破り、れみりゃはそこから桃風味の餡子を吸いだしていく。 「うー、うー、うまうま♪」 「あああああっ!! すわれるぅぅぅ♪」 てんこはれみりゃに中身を吸われてるというのにヘブン状態だった。 れみりゃもまた、初めて食べる桃の香りのする餡子の味を楽しんでいた。 しばらくするとてんこは皮だけの存在となってしまった。 さすがに中身が無いので子供は実らないようだ。 「うー、もっとほしいどぉ~。しゃくや~もってきでぇ~♪」 れみりゃは奇妙なダンスでおかわりを希望する。 「ゆっくりいじめてね!」 「うー♪」 れみりゃの願いが通じたのか、てんこが姿を現した。 「がおー、たべちゃうぞ~♪」 よちよち歩きでてんこに近づいていく。 その時他のてんこが姿を現した。今度は1匹ではなく10匹ほどいる。 「「「「いじめてくれるよかんがするよ!! ゆっくりいじめてね!!」」」」 「うー♪ いっぱいいるどぉ~♪ ぜんぶれみりゃのものだどぉ~♪」 てんこの言ってることは理解していない。れみりゃにとっては美味しい獲物が増えただけ。そう思っていた。 「いじめてね!」 「だめだよ! わたしをいじめてね!!」 「ちがうわ! わたしこそいじめられるのにふさわしいわ!!」 れみりゃに10匹のてんこが殺到した。 「う、うー? うあ"ー!!?」 瞬く間に押し倒されるれみりゃ。 「はなぜーうぶっ!!」 大口を開けて叫ぼうとしたれみりゃの口に1匹のてんこが体を突っ込んだ。 「わたしにかみついてね!!」 「ずるい! つぎはわたしがかみつかれるからね!!」 「だめよ! つぎはわたしがいじめられるの!!」 「んがー、んがー!!」 獲物のまさかの反撃に涙を流して恐怖するれみりゃ。 てんこに押し倒されるれみりゃの周りにはさらに複数のてんこが順番待ちしていた。 話は戻って天界。 「さぁ、行くわよ衣玖。あんな下等生物など根絶やしにするわよ!」 「はい総領娘様」 天子と衣玖は天界の花畑の中心へ降り立つと、 その二人の姿に気づいたてんこ集団は一斉に叫ぶ。 「「「「「「「「おねえさんいじめてくれるひと? ゆっくりいじめてね!!!」」」」」」」」 「っ…! うるさいわね」 イラついた天子は緋想の剣を地面に突き刺して地殻変動を起こそうとする。 「総領娘様お待ちを。まずは私が辺りを一掃します」 「…そうね。まずはまかせるわ」 衣玖雷で焼き尽くせば子を実らせずに死ぬだろうし効率も良さそうだ。 天子はそう考えて緋想の剣を収めた。 衣玖は宙に浮かんで辺りを見渡すとお気に入りのポーズで構える。 通称サタデーナイトフィーバーだ。 天を指した指の先に大きな雷球が生成されていく。 (なるべく花畑には被害がないようにしないと。標的はゆっくりてんこ) 衣玖は目に見えるてんこ全てをターゲットに定める。 「さぁ、いきますよ!」 衣玖がそう宣言した次の瞬間、指の先に出来た半径10mはあるだろう大きな雷球から無数の線が地表へと走っていく。 「ゆ"ぐっ!」「ぶへっ」「げぇっ!」「ゆっ!?」「ぉひっ」「ぶばっ」 「ゅふぇ!」「げしょっ!」「ゅ"っ」「ひぎぃ」「あぁん!」「ぎゃぶ!」 「ちょっと衣玖!? きゃっ!」 「ぎゃぼっ!」「よぎゅっ!」「ぶげっ!」「ゅぐぉっ!!」「ひでぶっ!!」 妖気のこもった高圧電流が周囲のてんこ達に到達すると、 様々な断末魔と共にてんこ達が黒焦げになって朽ち果てた。 「総領娘様。まだ生き残ってるゆっくりがいるはずです。止めを刺しに行きましょう…って何で焼けてるんです?」 「あんたのせいでしょ! 私も狙うなんていい度胸ね」 「あぁ~、すみません。似てるのでつい…」 「まったく。後でお仕置きだから覚えておきなさいよ!」 天子はそれだけ言い残すと生き残ってるてんこを排除するために飛んでいく。 「お仕置きですか。それは楽しみですね、ふふ」 衣玖は小さく呟き軽く微笑むと天子とは逆方向へ飛んでいき、残るてんこを潰しに行く。 「要石ドリル! 天地開闢プレス!!!」 様々な技で天子はてんこを潰していく。 瞬殺すれば子は実らない。地震や半端な攻撃はしないようにだけ気をつける。 仲間を瞬殺されるとてんこ達は不満をあらわにした。 「なんでゆっくりいじめてくれないの!」 「そうよ! ゆっくりいじめてね!!」 「はやくちゃんといじめてね!!」 「おばさんゆっくりできないのね!!」 「わたしたちのまねしたぼうししてるくせにね!!」 「真似はお前たちだ! もう怒った。本気で行くわ!」 「全人類の緋想天」(Lunatic) 周囲の気質を緋想の剣に凝縮して一気に解き放つ超大技。 知らない人はかめはめ波を思い浮かべればいいだろう。 天界の地形が変わることも厭わず全人類の緋想天で周囲を吹き飛ばしていく。 てんこは緋想の剣から解き放たれる波動に飲み込まれると次の瞬間には灰と化した。 それを見た仲間のてんこは死なない程度に味わってみたいと全人類の緋想天に自ら飛び込んでくるので天子としては楽だった。 だがてんこがタフとは言っても所詮はゆっくり。天子最強のスペルに瞬間でも耐えきれる訳がなく瞬殺されていく。 一分後には辺りは焼け野原と化していた。 動くものなど何一つない。 「ふっふっふ、饅頭ごときが調子に乗るからこうなるのよ」 勝ち誇った天子には輝く笑顔が浮かんでいたが、すぐに笑えなくなった。 「「「「「「「いじめられるときいてやってきたよ!!!」」」」」」」 虐めてくれる人がいると聞いてきたのか、はたまた感じ取ったのか大量のてんこが天子の周りに集まってきていた。 「あーもう! なんなのよ! こうなったらとことん殺してやるわ!!!」 ある森の中、まりさに「いじめてぇぇぇ」と迫っていたてんこは近くの山の上から何かを感じ取っていた。 「いじめてくれるにおいがするよ! ごめんねまりさ! こんどまたいじめてね!!」 「ゅ…ゆ…」 母まりさは精神的に消耗していたが自分が助かったことに安堵した。 でも何か背中がヌルヌルする。そういえば自分の子供はどこいったのだろう…? また、れみりゃに圧し掛かっていたてんこ達も虐めてくれる気配を山の上に感じ取っていた。 「またこんどいじめてねれみりゃ! てんこ達はやまのうえにいくよ!」 「ぅ、うー?」 てんこ達が突如立ち去っていったことを不思議に思ったけどようやく助かった。 早く屋敷に戻ってぷっでぃんを貰おう。 そう思って動こうとしたれみりゃだったが、手足は潰れてしばらく動けそうになかった。 「うあ"ー! いだいいだいぃぃ!!! しゃくやだっすげでぇぇ!!!」 手足が潰れていることに気づいたれみりゃは痛みに泣き叫び、助けを求めた。 しかしその場に現れたのはしゃくやではなく、甘い匂いに誘われてきた野犬だった。 さて、天界でてんこ殲滅を図る衣玖はというと… 「いきますよ。天突「ギガドリルブレイク」!!」 衣玖の纏う緋色の羽衣を螺旋状に腕に巻きつけ、さらに放電させつつ相手を貫く龍魚ドリルのでっかいバージョンだ。 巨大ドリルを右手に装備し、てんこの群れに突撃していく。 「ゆぅぉぉぉぉ!! いじめられるよかん!!!」 「きてえぇぇぇぇ!! ゆっくりいじめてねぇぇぇ!!!」 しかし衣玖が通り過ぎた跡に残るのは炭と化したてんこ。 最後にドリルに貫かれたてんこはドーナツのように顔の中心に巨大な穴を開けて生涯を終えた。 「ああああ! なんでゆっくりいじめないのぉぉぉぉぉ!!」 「ゆっくりいじめてよぉぉ!!!」 やはり瞬殺されるのは嫌らしい。じわじわと痛めつけられるのは好きだというのに。 「ふふ、最後に残った一匹はゆっくりと苛めてあげますよ」 「ゆ! わたしをさいごにのこしてね!!」 「わたしだよ! ゆっくりいじめられるのはわたしをおいてほかにはないわ!!」 「いじめられるのはわたし! ほかのてんこはしゅんさつされてね!!」 自分が最後に生き残ろうと他の仲間を盾にしようとするてんこ。 その構図はまりさ種に多くみられるものだが、てんこの場合はその理由が虐められるためなのだから不思議だ。 「最後に残りたいなら必死に逃げることですね。次は鬼ごっこで遊びましょう」 そう言うと衣玖はいつものポーズでスペルカードを発動する。 棘符「雷雲棘魚」 大電流を自分の体に纏う攻防一体の必殺スペルだ。 触れれば間違いなく黒焦げになって死ぬ。 「さぁ必死に逃げ回ってくださいね」 どこまでも穏やかで黒い笑みを浮かべながら衣玖はてんこの群れへと寄っていく。 「こ、こっちにこないでね!!」 「あっちのてんこをしゅんさつしてね!!!」 必死で逃げるてんこだったがその動きは遅く、衣玖にすぐ追いつかれてしまう。 「こ、こないで! こな…ああああああああっ♪」 追いつかれたてんこは恐怖と歓喜の混じった悲鳴をあげて炭になった。 その悲鳴を聞いたてんこは逃げる足をピタリと止めた。 なんて気持ちよさそうな声だろう。 あのおねーさんに触れたら死ぬけど気持ちよさそうだ。 ゆっくり虐められるためには最後まで生き延びなきゃ、でも味わってみたい。 てんこ達に何とも不思議な葛藤が生まれ、一匹…そしてまた一匹と雷雲棘魚を発動中の衣玖へ飛び込んでいく。 「あああああっ♪」 「し、しあわせえぇぇぇぇぇ!!」 「すっきりぃぃぃぃぃ」 「さいこぉ~♪」 その断末魔はどれも甘美なもので、それが呼び水となって周りにいたてんこが次々と衣玖へ飛びついて行く。 「ふふふっ、なんてバカなんでしょう。一瞬の快楽のために死を選ぶなんて…!」 「あぁぁぁぁっ! もっとバカっていってぇぇ!!」 「いっぱいいじめてえぇぇぇぇ!!!」 こうなると確変フィーバー入れ食い状態だ。 数百のてんこが衣玖の周りで二通りの昇天を味わっていく。 「いいんですか? 今死んでしまうとゆっくり虐めてあげませんよ?」 「!! で、でもぉぉぉ!」 「おねえさんにいまの責めもあじわいたいよぉぉぉぉお!!!」 涙を流して目の前の快感と未来の快楽に揺れ動くてんこの心だが、てんこはゆっくり種。目の前の誘惑には勝てなかった。 「でもやっぱりいまいじめてほしいぃぃぃぃ!!!」 「くろこげにさせてえぇぇぇぇ!!!」 それから何分経っただろうか。 すでに衣玖の周りにはてんこが数えるほどしかいなくなっていた。 衣玖は雷雲棘魚を解除すると衣のドリルで残ったてんこを次々と貫いていく。 「つ、つぎはわたしをつらぬいてぇぇぇ!!」 「わたしもつきさしてぇぇぇ!!!」 残ったてんこは衣玖の持ち出した約束、残った一匹をゆっくり虐めるということを知らない。 約束を聞いたてんこはすでに炭になっている。 「貴方で最後ですね」 「ゆっくりいじめてね!!」 「はい♪」 グシャ 最後のてんこは脳天から衣玖の衣で貫かれ、悦の表情で絶命した。 「あら、あんたも終わったみたいね」 「総領娘様。確かに全滅させましたよ」 そしてこれで天界の危機は去っただろう。あとは龍に報告だけすれば終わりだ。 「では、私はこれで」 「ええ、今日は助かったわ。またね衣玖」 「はい。また来ます総領娘様。…掃除の終わるころに」 「…え"?」 「それではっ」 衣玖は空気を読んで足早に龍の世界に帰って行った。 残されたのは天子と大量のてんこの死骸。 天界の美しかった花畑はてんこ集団に荒らされたこと、天子と衣玖が暴れたことでひどい有様になっていた。 桃の香りもてんこの死体から発せられるムワッとした不快な匂いが漂っている。 てんこの数が多かっただけに掃除は大変だろう。 「あーもう! 衣玖のばかー!!」 数日後 衣玖が天子に会いに行った時に問答無用で勝負を挑まれたのは言うまでもない。 終 by ゆっくりしたい人 なんだかカオス。酒飲んだノリで書いた結果がこれだよ! このSSに感想を付ける